前作から4年のインターバルの末にリリースされた勝負の3枚目。リリース時期が1988年という事もあり、音楽性はかなり洗練されたものに変遷している。しかし根底にあるのは男のロック。その暑さを滲ませつつも、よりワールドワイドでメジャーな感覚を強め間口を広めてきた。これがあのアンダードックなのかという戸惑いは最後まで拭えないのだが、メロディを大切にした欧州メロディックメタルが好きな人ならば大いに引き寄せられるだろう。唄モノスタイルへの大胆なシフトチェンジ、5曲目のI Show You a Feeling (It's More than Your Love)ではサックスの音色まで聴かせるのだから、このバンドがいかにアーバンでダンディなシティロックへと変貌したか理解も及ぶでしょうね。 単純に音楽として楽しむならば唄モノAOR系を愛するマニア向けでしょう。とにかく過去2枚とは別のスタイルです。それでも質は低くないのが、このバンドの力量でしょうね。器用貧乏で終わったのかも知れないが、もっと認知されて良いバンドである。 ワタクシのようにMausoleum Recordsマニアから入った人も多いでしょうが、このサウンドは大衆性を完備したアリーナサウンドである。 それも悪くないと感じさせたポテンシャルに唸りますね。すべては時代だよ。レーベルも倒産して路頭に迷う彼ら、よく分からん自主レーベルみたいなもんからヒッソリとリリースされた3枚目。 唄モノマニアには今すぐサブスクを聴けと言いたい。
揺るぎなき精神性、ここで聴けるサウンドは懐かしい香りがする、しかし、それは彼らの歴史の系譜である事を雄弁に語っている。往年のロックファンに取っては現役感バリバリのクラシックロックとして、ビンビンに響き渡るだろうし、若い人にとっても、これほど古典を模しているのにフレッシュな感性に彩られたサウンドに心打たれるでしょうね。今作に『Too Scared to Run』や『CHASING SHADOWS』『Straight Through the Heart』が収録されても全く違和感がありません。
個人的にはロニー・ジェイムス・ディオの声が聞こえてきそうなロマンと力強さが真正面からぶつかり合い強烈な化学反応を起こしたFREEDOM TO BE FREEで締めてくれた方が好きなのだが(ロマンティックなコーラスワークからのオルガンソロがたまらん、ベースも大活躍させますねとメンバーの見せ場が多い)、らしさ全開の③や哀愁のメロディとポジティブさが絶妙な絡みを魅せるキャッチーな④など日本人には受けそうだ、美しいスローナンバー⑥に魅了され、フィルとミックの二人が導く壮大なストーリー、そのうつくし情景に心打たれるメロディックな⑦、そして後半のハイライトと言える場面展開の多い獄彩美なヒープサウンドを貫いた⑧、インパクト大なオープニングナンバーをしっかり受け止めた②の素晴らしさ、タイプは違えどシングル向けの一曲である。⑪もこのバンドらしい賑やかな一曲、オルガンが先導するEasy Livin'を想起させるようだ、楽しげなクロージングソング、ある意味、これは正解だと言えるでしょうね。
のちにお蔵入りしたロートン時代のアルバムがブートで出回り、今作から③④はロートンヴァージョンもあり両者の違いを味わえるのもチョイとした話題でした。そしてオフィシャルな形で未発表曲を収録した4枚組のベスト作『A TIME OF REVELATION』で確認する事も可能ですのでマニアは要チェックでしょう。