かつて短期間ではあるがジョン・サイクスが在籍していたことでライトリスナーから注目を浴びたバンド。特にサイクスがWHITESNAKEで成功したあとは、逆輸入状態でこのバンドも再注目を浴びた。しかし、ジョンがいた期間はNWOBHM最盛期、その時期に作られたアルバムがいかにもNWOBHM的な魅力に富んでおり、その立役者がジョンと言われた分けですが、実際、ジョンはバンドに発言権はなくイニシアチブをとれるような立場ではなかった。ましてや、加入直前まで活動していたSTREETFIGHTERではヴォーカル兼ギターで活躍、THIN LIZZY丸出しのローカルバンドで、フィルにソックリな歌い方でリジー節を炸裂していた男、TYGERS OF PAN TANGではゲイリー・ムーア直系のプレイを披露、確かにスピーディーなソロワークには目を見張るが、個性に乏しくギターヒーローとしてはこれからの有望株だったでしょう。 このバンドの首謀者はギターのロブ・ウィアーであり、主導権は彼の手にあった。ジョンは助っ人でありメインソングライターではありません。WHITESNAKEで売れたが為に、再評価された辺りからジョン・サイクスがどうのこうのと言われ出しましたが、嘘ではないが正解ではない。何をしてTYGERS OF PAN TANGなのかで見方は変わりますが、名盤『SPELLBOUND』の方向性はプロデューサーのクリスによる影響も大きいでしょう。サイクスではありません。
1984年にバンドは一旦活動停止。そして今作はレコード会社もアメリカのMCAレコードからイギリスのMusic for Nationsへと変わりました。なにより参加メンバーが大幅に変更、オリジナルドラマーのブライン・ディック、ヴォーカルのジョン・デヴァリルの二人はいるのだが、ベースはサポート、そしてギターは新生コンビに生まれ変わります。しかもメインソングライターがサポートベースのスティーブ・トンプソン(初期NEATレコード関連に携わる人物、RAVENのプロデューサーも務めています)、前作にあたる『THE CAGE』でも顔を出し、バンドを支えていた人物です。ある意味、ポップ化するバンドの手助けをしたわけですが、今作でも彼のコンポーズを頼りに唄モノ路線を強化、主役はシンガーのジョンの歌声であり、彼はポップスからバラードにハードな曲まで難なく歌いこなし、その存在感をより強いモノにしています。バンドとしての顔が益々イケメンのジョン・デヴァリルに移行していますが、新生ギターチームもコンパクトながら印象的なプレイを持ちいり、このメロディアスかつポップなハードサウンドの中でギラリと光を放ちます。
今の時代を見据えたベテランバンドの一撃、古さに埋没しないが、背伸びをしない余裕のあるサウンドは、実に伸びやかに新生TYGERS OF PAN TANGサウンドを奏でている。またソーレン・アンダーセンやハリー・ヘスの二人がミキシングとマスタリングで参加、二人のアドバイスがあったかは不明だが、メロディの味付けなど、随分とメロディアスで練り上げられているなぁと感じますね。かつての彼らとは確実に違う、細部に拘った音の作りにも耳が行きますね。
NY出身の5人組によるEPが今年に入り復刻、元は4曲入りでしたがCD化に伴い、あのMausoleum Recordsからリリースされたオムニバス『Metal over America』から2曲プラスにデモ2曲追加の8曲入りで2016年2月にリリース。ずっと忘れていたバンドだったのですが、今から4~5年前に懇意にいしていた貴重なメタル仲間から『タカハシ復活したぞ』と一報が入る興奮しすぎてタカシをタカハシと言い間違えるくらいのビックニュースなのかは分かりませんがドエラいテンションが高かった事を思い出します。そして何の復活だったのか?今持って知る由もないのですが、数年後こうしてこの作品がよもや世に出るとは…共有できるツールが増えた副産物の成せる技なのか恐ろしい時代になったなぁと感慨深いものがありますね。誰も知らんし誰が買うねんである。復刻に合わせ久しぶりにオムニバスを引っ張り出し『Kill Or Be Killed』を聴いたのですが、紹介文にあったヴァージンスタイルロックという文言に、そんな音楽性だったかいなぁと思いを馳せながら購入を決意。その成果はマイナーメタルもマイナーな世界観、ボン・ジョヴィ感覚で付けたのかタカシというバンド名、そのオフザケ感とは裏腹な見た目はグラマラスなんですが、意外と硬派で真っ当な音楽性に、なんとも言えぬヌルッとした感覚を味わう微妙な空気感の一品。平坦な音質のせいもあるがフックに乏しい歌メロと単調なリフワークとリズムなど片目閉じて聴い貰わなんとイケないような作品なんですが、マイナーメタルマニアの血が騒ぎ、こんな所が好きだと、マイナス部分よりも自分の好みに合わせアジャスト出来るストライクゾーンの広さに恨み節も出ます。行列のできる名店に並び、せっかく食べる機会に巡り合わせたのに、定番メニューを外すヘソ曲りな真のカブキ者を自負する猛者限定の一品ですね。
1986年に4曲入のEPをリリースして消えた幻のUS産正統派メタルバンド。今作は2016年にあのCult Metal Classics Recordsからデモ音源やライブ音源など未発表曲も大量に追加されてリリースされた一枚。オリジナルのアナログ盤が高価なレートを維持していただけに、この復刻はマニアにとってはありがたい出来事でしたね。 鐘の音が裏で鳴るオープニングナンバーが示すようにダークでメタリックなサウンドを主体としたガチンコ正統派メタルを展開、一切、媚びへつらう事の無いサウンドは、本来のアメリカンメタルとはこうだったんだよと言いたげなスタンスを見せつけています。 時代はメタルバブルに沸き起こる1986年です、受け皿なきシーンもさることながら弱小レーベルでは太刀打ちなど不可能でしょう。
メロディアスでダークなメタルが好きな方ならば大いに楽しめるでしょう。また、このバンドがレアというだけで高額なレートはつきません、その質の高い音楽性があればこそ、インディース盤というのを割り引かなくても、そのガチンコな精神性には強くメタルスピリットを感じますね。光沢艶めかしいパワフルなメタルサウンドの凄み、本編4曲の強烈さに耳を奪われるのですが、それ以降の12曲も激レア感がエグいので、マニアにとってはありがたい一枚です。とは言え、音質的に厳しい面は多々あります、とくにデモや未発表曲に関しては、板起こしかと思うほど、厳しいモノがありますので、コレクターアイテム的な満足度なんでしょうけどね。 もっとしっかりとした音質で聴きたいと思わせるクオリティ、こういうバンドが世に出られなかったのは残念ですが、運も実力の内なんでしょう。それにしてもCult Metal Classics Recordsはマニアを散在させるレーベルですね。
THE MAN自体が究極のトリビュートバンドという立ち位置の為に、全曲カヴァーとなっているが、これが興味深い。ある意味、ベタ過ぎて避ける曲などが中心の為に、いささかフレッシュ感は少なめとなっているかも知れないが、個人的には逆に、ここまで素直な曲が多いと興味も倍増。ANTHEM組がJPの曲をどう料理するのか楽しみで仕方がありません。柴田直人の趣味嗜好を考えれば以外ではないのだが、やはりHEEPのJULY MORNINGなど、キーボードのYUHKIなしには成り立たない予想外のカヴァーもあり興味は尽きない。
EARTHSHAKERの西田昌史がバンドの顔となるロックグループ。マーシーとは縁のある若いミュージシャンを従え実にフレッシュな感性を落とし込んだ普遍的なハードサウンドと展開している。正に『THE NEW OLD WORLD』という事だろう。 昨今流行の男女ツインヴォーカルの相方を務めるのは奈良井恭子ことgi-na。ギターはマーシーと縁の深い、峰正典。ベースは天才少年としてメディアにも取り上げられたKenTも18才に成長、ベースはFIREさん、このリズムセクションがタイトでクール。熱き感情を込めつつもビシッと決めてくれます。なんと言っても生身の人間から叩き出されるグルーブが心地よい。
英国産の5人組によるプログレハードバンドが1982年にリリースした一枚。流しの中古屋さんで買ったので詳しいバイオはさっぱり分かりませんが、Vo.Gで活躍するHoward 'Tosh' Midlaneが中心人物らしい。いかにも英国のバンドらしい湿り気を帯びたメロディとトラッド風味満点、泣きのギターを散りばめたムード満点の叙情派サウンドを披露。高い演奏力に支えられた楽曲の構成力は高く、サックスなども盛り込みちょっぴりブルージーな面もあったりと聴きこむ程に奥の深さに興味も惹かれます。とは言えハードな楽曲を味わえるのはA面の2曲Julius、Queen of Tiger Bayだけで、B面はかなり大人しい落ち着いた楽曲で占められておりますが、ラストのOne More For The Road の雄大な世界観も良いフィーリングに包まれていますよ。繊細なアレンジとメロディを多角的に楽しめる一枚、たまには箸休めにいかがでしょうか
1979年と81年のシングルに83年のデモ+未発表音源からなる2015年リリースのコンピ作。リリース元はNWOBHMなどマニア垂涎の作品リリースに定評のあるHigh Roller Recordsときてますので安心して手を出せますかね。英国特有の憂いを帯びた哀愁のメロディをふんだんに含んだNWOBHMサウンドを披露、CD化といっても元が知れているのでシケシケの音質にダイナミズムを感じませんが、そこが逆にマイナー臭に拍車をかけ、カビの胞子が飛びかうじっとりとした湿度の高いメロディで聞き手を魅了。ベースのみならずボーカルやシンセサイザーまで演奏するマイク・ウィラーの辣腕ぶりがバンドをサウンドの根幹を支え、シンセを前面に出した名曲『Save the Khan 』から、ブルージーな『Ghost of An Emotion』、アタッキーな『Hellhound on My Trail』、キャッチーな哀メロナンバー『Marionette』、パープル風味満点のヘヴィな『Metal Messiah』など多様性のある音楽性を演出している点が最大の聴きどころでしょう。鋭利なリフワークでグイグイと攻めてくるNWOBHMサウンドも良いですが、彼らのような叙情派メロディック路線を押し出したサウンドも同等の魅力だし、英国と言えばな音に満ち溢れているので、マニアにはたまらんものがあるでしょう、でも詰めも甘いしヌルイ演奏や自主制作極まりない音質に頭を抱える事もありますがね。