97年発表の3rdアルバム。「PECADO」は「SIN」のポルトガル語。 確かにこれは「ゴシック」の範疇に入るアルバムと言え、当時業界を席巻していたであろう、デジタル・ゴシックの波を被ってはいますが、「君ら結局流行に飲まれてるだけやん」とはとても言えないものです。 ゴシックのムード作り・メロディ感覚やデジタルの無機質さだけでなく、TYPE O NEGATIVEあたりの色気も取り込んだこの、ポルトガル産バンドのアルバムは、神聖に対抗する為の「厳粛さ」と、耽美とは違う「妖艶さ」が合体したような独自のゴシック・ロックで、アンチ・キリスト=粗野で野蛮でブルータルとするバンド群とは別次元の宗教性があります。 楽曲・アレンジメントの幅も多種多様で、屈強でありながら混沌、妖艶と無機質の交歓、歌い易い重苦しさなど、様々な要素を違和感なく料理して仕上げています。寡聞にして言わせて貰えば、このアルバムと同様の世界、そして完成度は、少なくともゴシックの中ではないと思います。 ただ、一体どんなバンドが好きな人に薦めればいいのかよく分からない。 前作におけるゴシック特有の感覚も、次作における攻撃性もなく、変なもの好きに薦めるにしてアヴァンギャルドさがないし・・・う~ん・・・ボーカルが TYPE O NEGATIVEと同等にディープな声を出すので(OCTOBER LUSTしか知らんが)、女性に薦めればいいのだろうか・・・あんなエロではないから聴いてて恥ずかしくないし。
全1曲40分弱のアルバムという事で、YESやGENESIS等、往年の70年代プログレ大作主義をデスメタルでやってみたかったらしいですけど・・・「同じ事を試みて他のバンドは失敗したが、俺たちは成功した」とライナーノーツで自画自賛してますが、正直、聴き終えて出て来た言葉は、「どこがやねん」。 確かにデスメタルリフの一つ一つは格好良いし、叙情パートもメロディックで文句ないんですが、その繰り返しが40分続くどうにも一直線な内容。例えば(素人考えですが)、ゴシックパートやドゥームパートを盛り込んだり、ハードコアや正統派ヘヴィ・メタルの要素を入れるとか、「デスメタル」というジャンルに収まる「ドラマティックな大作」や「壮大な物語」は出来ると思えますが、そういった多様性は、はっきり言って皆無。 ドラマというより、幻覚としか思えないぶっ飛んだ物語性に強引に納得・感動させられるGENESISの「SUPPER'S READY」や、複雑・緻密・技巧的極まるアレンジな上、壮大極まるユートピアとして成立しているYESの「CLOSE TO THE EDGE」などとは較べるべくもないが、前半のフレーズが頻出する後半はそれなりに楽しめた。 OPETHのMikael Akerfeldtがゲスト参加している。
発売された当時、前作「DUSK AND HER ENBRACE」を崇め奉っていた私は、「泣き」どころか「哀愁」すら薄いこのアルバムの楽曲群とパタパタドラムに心底絶望、2度ほど聴いた後「大駄作」の烙印を押して部屋の奥に封じ込め、その後、このバンドを思い出す事は、最近までなかった。 改めて聴き直してみると、「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」ではないが、「ドラマティック・ダーク・スラッシュ・メタル」としてとても楽しめた。疾走感に重きを置いた作風で、その疾走感を失わないようにして、装飾もドラマも付随しているように感じる。全編スラッシーでメタリックな快感で構成されており、翻って、前作はプログレッシブなアルバムと言えるのかもしれない。 哀愁はないが、その分恐怖と不穏が際立っているわけで、それはつまり、このバンドの幅広い表現力の証左だったのだな、と今更反省した次第です。輸入限定盤だけ取っておいて良かったと思うし、このサイトの存在を知って本当に良かった。 今度また、MIDIANから買い始めようと思います。
2001年発表7thアルバム。KeyヘルプでBAL-SAGOTHのJonny Maudlinが参加。 5th、6thアルバムは持っておらず、このバンドのCDを購入したのは4th「LIKE GODS OF THE SUN」以来10年振りなんですが、いや、驚きました。「懐かしい」どころじゃないです。 1st収録曲をリメイクしてるから「それなりに原点回帰してるんだろう」と思ってましたが・・・何と、リメイク曲が何一つ違和感なくアルバムに溶け込んでおり、つまり、音楽性は何だか1stっぽい、という有り得なさ。何故そこまで何もかも回帰してますか!?聴いてたらもう、呆れを通り越して、失笑通り越して、突如悟りが開いて泣けます。6thからバンドロゴが1st・ 2nd時に戻ってる事にもっと早く気付くべきでした。 「バイオリンをメンバーとして加入させたのは間違いだった」とでもいうような、哀愁は少なくメロディも少なくつまりあまり耽美的でなく、でもデス声は大復活してフックも薄く(メタルとしては)冗長な「鬱屈絶望メタル」という事で、救いようのなさはそれはもう完璧。地下水脈に絶える事なき暗黒の流れ。もう永遠にこのまま続けてください。
まず「EPITOME OF ILLUSIONS」を聴いて、次にこの3rdというのも変則的な聴き方だと思うが、何だかシンセが引っ込み過ぎてて、細かい部分が全然聴こえないんですけど・・・ミックスか何か間違えたの?こう意図したのか?確かにシンセの旋律より、マシン・ブラストの破壊力が凄まじい音圧で迫ってきて迫力満点ですけども。 メロディを抑えた神々しい暴虐ブラスト・ドラマと言えば聞こえはいいが、ほぼブラスト一辺倒なのに曲は平均8,9分と長めで正直冗長だし、壮大なシンセの旋律こそこのバンドの核と思っていた私にとって、これはちょっと不満。 でも基本の音楽性は変わってないし、あんまりシンセが目立たなくても充分に魅力的な蹂躙感を体験出来るので、割と満足はしました。Deamonのボーカル表現力が上がってて、絶叫はかなりのおぞましさ。
前ミニ・アルバムと較べて基本路線は同じ「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」だが、そこにさらに、哀愁の旋律が全編を覆い尽くし、シンセも女声もブラストも何もかも哀しみに向かって収斂されていく。特に④「A GOTHIC ROMANCE(RED ROSES FOR THE DEVIL'S WHORE)」、⑥「MALICE THROUGH THE LOOKING GLASS」、⑨「BEAUTY SLEPT IN SODOM」のようなバラードパートの出現が顕著な例で、個人的には、これ以上壮大に悲劇に酔える音楽を知らない。猛烈に泣ける。 悲壮のドラマが猛然と疾走するメロディック・ブラックの超大傑作。捨て曲一切なし。完璧。神の作品。何百回聴いたか分からない・・・という行き過ぎの絶賛は、日本盤と輸入デジパック盤と棺桶ケース盤を所持している私には許されると信じる。 個人的には⑤「NOCTURNAL SUPREMACY '96」を外して聴いて欲しい、96年発表の2ndアルバム。 ちなみに、「Daniの奇声が受け付けない」という意見をよく見るが、私にはその意味が分からない。理解不能。初聴時から「素晴らしい」以外の感想を持った事がない。
96年発表の1stに次ぐミニ・アルバム。 1stと較べるといきなり音圧が格段に上がっていて、冒頭のリフからもう禍々しさが違う。Daniのボーカルも高音絶叫から低音咆哮まで幅広く駆使、さらに女性ボーカルもSarah Jezebel Deva等が全面的に参加して演劇性が過剰なほど加わり、ド派手になったオーケストレーションがまたドラマを煽って煽って煽りまくって疾走・狂気・頽廃・哀切・恐怖・官能が暴風雨の如く暴れ回るシアトリカル・デカダンス・ドラマがここに完成している。1stと基本的に音楽性は変わってないのだが、凄まじい装飾の嵐でとても同じに聴こえない。 「DUSK AND HER EMBRACE」が好きなら聴かずに死ねないアルバム。 ここからジャケが良い感じになってますが、メンバー写真は全員が全員瞳孔がなくなってて怖いです。
94年発表の記念すべき1stアルバム。 いやはや、まずジャケが最高過ぎ。女吸血鬼が女性を襲ってるわけですが、まー単純に言って、裸の女性二人が血塗れで抱き合ってますな。いやーエロい。何度見てもエロいです。しかし、金がなかったのか内ジャケは至ってシンプルで、独特のデカダンス世界はありません。 音の方は、次作以降繰り広げられる「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」の雛型というか、複雑でメロディックな「ドラマティック・スラッシュ・メタル」と言えます。 音質が良くなくて、シンセの音色が薄っぺらく豪華とは言えない上、装飾以上には扱われていないので明確に分かりますがこのバンド、「ブラックメタル」と言われていても、端から「どれだけ速く演奏するか」という勝負に乗ってないんですよね。「暴虐」よりも「耽美」の意識が強い。このアルバムの時点は装飾塗れの暗黒絵巻ではないしスラッシュ的な聴き易さがあるという点で、案外「CRUELTY AND THE BEAST」が気に入っている方はすんなり受け入れられるかもしれません(それより後は聴いた事ありませんが)。 Daniのボーカルスタイルもデス/スラッシュに近く、超音波絶叫もなく、濁っているけど狂ってません。 繰り返しますが音質は悪いです。 この時点で既にギター、ベース等の表記はなく、皆さん「Satanic War Noise」や「Winter Evening Storms」等を担当しておられます(何じゃそりゃ)。
ゴシックどころかメタルですらないアルバムの中、この曲だけゴシック的耽美意識が漂っている。驚くべき事に、リピートされるボーカルは2nd収録「SHROUD OF FROST」と同じではないか!! 後半のリフのうねり、切なく囁くコーラス、Danielによる幽玄なフィードバックギター・・・渦巻く暗黒美意識の明確過ぎる表出に、古参ファンとしてほくそえんでしまった。
前半、朗々と歌い上げておきながら、一転、後半は本性を現したのか怒涛のブラスト・・・いやもう曲の印象なんかどうでもいい。 何と言っても聴きどころは・・・ブラスト時のSkollによるトレモロベースラインだろう!!猛烈に泣いている!!最高だ!!これが聴きたかった!! あと、「I am the one worthy」と卑しく叫ぶVictonikのデス声が好き。
93年発表、SADISTのデビュー・アルバムは少なくとも、昨今のメロディック・デス界隈に全くない音である。 IRON MAIDENスタイルと言える北欧的哀愁はこのアルバムには一切ない。だが、北欧産のどのアルバムよりも、煌びやかで、気高く、情熱的な叙情性に満ち満ちている。デスメタルパートと同等、どころかそれ以上に、静かで落ち着いた叙情パートがアルバムを支配している。その対比のダイナミズムを過剰に煽り立てる多種多様なシンセ装飾の、「クラシカル」なのに「シンフォニック」でないという特異性。静も動も巧みにこなす3ピースアンサンブルと、一級のテクニックを駆使するTommy のギターワーク。ギターソロのおいて発散されるその気高い哀愁は、かのマイケル・アモットにも比肩すると言い切ってしまおう。 確かに、ボーカルに何の魅力もないし、音質もチープだ。だがそんな事とは無関係に、このアルバム・このバンドの音楽性を「誰も引き継げなかった」から、有象無象のデスメタル界に埋もれてしまったように思えて、悲しくなる。
95年、3rdの後に発売されたEP集。 内容は、1stフルより前に発表された1stEP「SYMPHONAIRE INFERUNUS ET SPERA EMPYRIUM」から全3曲、1sフル後の2ndEP「THE THRASH OF NAKED LIMBS」から全3曲、2ndフル後の3rdEP「I AM THE BLOODY EARTH」からは2曲だけ、再発でない3rdフルの限定デジパック盤のボーナストラックだった「THE SEXUALITY OR BEREAVEMENT」、で計9曲です。 どれもこれもフルアルバムに入っててもおかしくない曲ばかりだと思います。個人的には東洋呪術のような(と日本人が言うのもどうなのかと思うが)アンビエント・インスト「LE CERF MALADE」が実験的で面白く聴けました。こういうのはEPだからこそ出来るものかと。 平均7分という曲の長さも、このバンドにしては聴き易いCDに思えます。 でも、「THE CROWN OF SYMPATHY」のRemixバージョンは意義はさっぱり分かんない。・・・2ndアルバム全体からサンプリングしたはずなのに原型を全く留めてないインダストリアル・インスト「TRANSCENDING(INTO THE EXOUISITE)」の方が余程面白いと思うが・・・(この曲、3rdEP収録なのに何故かこのアルバムに収録されてない)。