92発表の1stフルアルバム。 このアルバムはデスラッシュではなくプログレッシブ・デスと言え、4th「SLAUGHTER OF THE SOUL」の影はほとんど見て取れない。ヴァイオリニストを含む6人編成、せわしなく落ち着かない展開、乱舞するメロディック・リフ・・・「メロディック・デス」という言葉すら生まれてない時期、北欧の地下で行われていた新しい形のデスメタルを作り出す為の「プログレッシブ」な実験から出てきた、異形のデスメタルであろう。 脈絡がない変態的展開に下手糞なヴァイオリンにチープ極まる音質と、負の要素が溢れているにも関わらず、それらに目を瞑って聴き続けられる理由は、3rd以降如何なく発揮される事になるメロディ感覚の萌芽だ。特にAndersの泣きの感覚が支配する⑤ 「Windows」が出色だが、どう贔屓目に見ても二流のデスメタルなのに、気付くと悪いと思えなくなっている・・・いや、4thを先に聴いている人がどう思うかは何とも言えないが・・・。 ちなみに、まだベースのJonasが曲作りにほとんど関わっておらず、それどころか、メンバー写真には別のベーシストが写っていたりします。
>Usher-to-the-ETHERさん 読みました。 つまり、前作までは入念に(あの独特の)ボーカルラインを作ってレコーディングに臨んだけど、問題(独特のボーカルラインへの反発が無視出来なくなった)が起こったため、(独特のボーカルラインを完全に捨てて)スタジオで即興で作った、という意味ですかね・・・。 「ORGASM」聴いてないんで即興の良さがあるかないか分かりませんが・・・インタビューアの「全く特異な作品ですね!(They are quite unusual...)」という問い掛けに対する、Monikaの「どこが?(not THAT unusual I think)」という返答が全てかなーと思いますね・・・。 ちなみに私が読んだのはこのページですttp://edvardsensingers.free.fr/indexmonika.htm 一応先頭h抜きましたが、これ直リンクになるんですか?
97年発表の1stアルバム。 同郷のバンドTHE 3RD AND THE MORTAL(1st)、IN THE WOODS...(1st)に近い雰囲気がありますが、おそらく最もメタルぽいというか、男性と女性ボーカルを擁しているところなんかからもゴシック・メタルと呼ぶ人も多そうな音です。 THE 3RD AND THE MORTALのように妖精を幻視するほどの神秘はなく、初期IN THE WOODS...のように静寂と発狂が豪快に展開されるわけでもなく、比較的個性は薄いですが、ただやっぱりノルウェイの矜持というか、上記に挙げたバンド同様に森林から発せられる妖気みたいなものが強くあって、耽美的というより幻惑的、ゴシックを冠するほどには重くなくて軽い感じ・・・浮遊感がある。似たバンドを辿っていくとMANESを通ってBURZUMに辿り着くという、静的ブラックもしくはアンビエント・ブラックの雰囲気があります(MANESは良く知りませんが)。 で、女性ボーカルMonikaですけど、時折その異常な声域の広さとアラビア/インドぽい音階・歌唱法を垣間見せますが・・・エキセントリック/ヒステリック/イノセンスを握りつぶして飲み込んだ挙句、それを小悪魔と堕天使の二重人格を駆使して放出しているような「あの」ボーカルは聴けません。凄い普通に妖しく歌ってます。 2nd、3rdの後にどうぞ、という事でしょうか。
96年発表の2nd(この年には、以前のレーベルメイトCradle of Filthが「Dusk and Her Embrace」を発表してますね)。ちなみにBal-Sagothというバンド名はロバート・E.ハワードの小説から取ったそうで。 Cradle of Filthがホラー風味のデカダン世界を構築したのと同様のレベルで、こちらはダーク・ファンタジー・サーガを物語っています・・・いや、その情熱の迸り加減は、推測ですけど、両バンドの全アルバムの中でもこれが一番ではないですかね。だってアルバムタイトルからして長過ぎでしょう?略になってない!曲のタイトルはもっと凄い事になってまして、それはもう、「この曲を聴け!」に登録するの嫌になるくらいっすよ。 曲の方も、やりすぎなシンフォニック・シンセと抑えきれない突貫ブラック根性が矢継ぎ早に「これでもか!」というほど繰り返されるシンフォニック・ブラック・アホ・メタルです(良い意味で)。サーガの世界観にに酔い過ぎてか曲単位では印象に残りにくい感じですが、そんな小言言うよりこの愛すべきB級メタルと共に叫んで暴れまわる方が100倍楽しいですね。 ま、さすがに彼らも全体的にタイトルが長過ぎると反省したのか、次のアルバムではその辺考慮されています。 3rdアルバムのタイトルは、「Battle Magic」・・・そりゃ略し過ぎだろ!
92年発3rd。 Ken Owen(Dr.)作のバラバラ死体のような構成で聴かせる前半から、グラインド/ゴアというより歪で病的な甘美さ持つBill Steer(G.)主導の後半へと流れて行く印象は、そのままこのバンドの変遷・転換点としての記録となっていると思われます。 Michael Amott(G.)主導の⑤「硫酸どろどろなんでも溶かす」もあり、これも名曲でありましょう。 次作「HEARTWORK」と較べると、ヘヴィさ・シリアスさよりもグラインドぽい軽快さ・コミカルな感じがまだあり、歌詞からしてもそうですが、ヘヴィ・メタルとして見れば「何の冗談だ」と言われるアルバムではあります。 私は「HEARTWORK」が、特にBillの作るリフが好きなんで、④「由緒正しき屠殺場」⑥「肉体不協和音」⑦「リゼルジン酸による嘔吐、吐瀉物による洗浄」辺りが好みです。
発売された当時、前作「DUSK AND HER ENBRACE」を崇め奉っていた私は、「泣き」どころか「哀愁」すら薄いこのアルバムの楽曲群とパタパタドラムに心底絶望、2度ほど聴いた後「大駄作」の烙印を押して部屋の奥に封じ込め、その後、このバンドを思い出す事は、最近までなかった。 改めて聴き直してみると、「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」ではないが、「ドラマティック・ダーク・スラッシュ・メタル」としてとても楽しめた。疾走感に重きを置いた作風で、その疾走感を失わないようにして、装飾もドラマも付随しているように感じる。全編スラッシーでメタリックな快感で構成されており、翻って、前作はプログレッシブなアルバムと言えるのかもしれない。 哀愁はないが、その分恐怖と不穏が際立っているわけで、それはつまり、このバンドの幅広い表現力の証左だったのだな、と今更反省した次第です。輸入限定盤だけ取っておいて良かったと思うし、このサイトの存在を知って本当に良かった。 今度また、MIDIANから買い始めようと思います。
前ミニ・アルバムと較べて基本路線は同じ「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」だが、そこにさらに、哀愁の旋律が全編を覆い尽くし、シンセも女声もブラストも何もかも哀しみに向かって収斂されていく。特に④「A GOTHIC ROMANCE(RED ROSES FOR THE DEVIL'S WHORE)」、⑥「MALICE THROUGH THE LOOKING GLASS」、⑨「BEAUTY SLEPT IN SODOM」のようなバラードパートの出現が顕著な例で、個人的には、これ以上壮大に悲劇に酔える音楽を知らない。猛烈に泣ける。 悲壮のドラマが猛然と疾走するメロディック・ブラックの超大傑作。捨て曲一切なし。完璧。神の作品。何百回聴いたか分からない・・・という行き過ぎの絶賛は、日本盤と輸入デジパック盤と棺桶ケース盤を所持している私には許されると信じる。 個人的には⑤「NOCTURNAL SUPREMACY '96」を外して聴いて欲しい、96年発表の2ndアルバム。 ちなみに、「Daniの奇声が受け付けない」という意見をよく見るが、私にはその意味が分からない。理解不能。初聴時から「素晴らしい」以外の感想を持った事がない。
94年発表の記念すべき1stアルバム。 いやはや、まずジャケが最高過ぎ。女吸血鬼が女性を襲ってるわけですが、まー単純に言って、裸の女性二人が血塗れで抱き合ってますな。いやーエロい。何度見てもエロいです。しかし、金がなかったのか内ジャケは至ってシンプルで、独特のデカダンス世界はありません。 音の方は、次作以降繰り広げられる「シアトリカル・デカダンス・ドラマ」の雛型というか、複雑でメロディックな「ドラマティック・スラッシュ・メタル」と言えます。 音質が良くなくて、シンセの音色が薄っぺらく豪華とは言えない上、装飾以上には扱われていないので明確に分かりますがこのバンド、「ブラックメタル」と言われていても、端から「どれだけ速く演奏するか」という勝負に乗ってないんですよね。「暴虐」よりも「耽美」の意識が強い。このアルバムの時点は装飾塗れの暗黒絵巻ではないしスラッシュ的な聴き易さがあるという点で、案外「CRUELTY AND THE BEAST」が気に入っている方はすんなり受け入れられるかもしれません(それより後は聴いた事ありませんが)。 Daniのボーカルスタイルもデス/スラッシュに近く、超音波絶叫もなく、濁っているけど狂ってません。 繰り返しますが音質は悪いです。 この時点で既にギター、ベース等の表記はなく、皆さん「Satanic War Noise」や「Winter Evening Storms」等を担当しておられます(何じゃそりゃ)。
96年発表の1stに次ぐミニ・アルバム。 1stと較べるといきなり音圧が格段に上がっていて、冒頭のリフからもう禍々しさが違う。Daniのボーカルも高音絶叫から低音咆哮まで幅広く駆使、さらに女性ボーカルもSarah Jezebel Deva等が全面的に参加して演劇性が過剰なほど加わり、ド派手になったオーケストレーションがまたドラマを煽って煽って煽りまくって疾走・狂気・頽廃・哀切・恐怖・官能が暴風雨の如く暴れ回るシアトリカル・デカダンス・ドラマがここに完成している。1stと基本的に音楽性は変わってないのだが、凄まじい装飾の嵐でとても同じに聴こえない。 「DUSK AND HER EMBRACE」が好きなら聴かずに死ねないアルバム。 ここからジャケが良い感じになってますが、メンバー写真は全員が全員瞳孔がなくなってて怖いです。
2ndよりこれ、という方結構いらっしゃるのですね。私もです。AT THE GATES「SLAUGHTER OF THE SOUL」みたいなスタイルに近付いたような印象もある97年発3rd。 八方破れの暴れっぷりがなくなってストイックになり、とても落ち着いたメランコリーが漂うデス・メタルだと思います。メロディも見せつけるのでなく落とし込んである感じで、泣きというより陰りの音楽、ゴシック・メタルみたいなデスラッシュと言えるのではないでしょうか。 比較すれば地味なんでしょうけど、部屋で一人浸りたくなるデスラッシュというのもあまりないような気がします。