そして楽曲そのものも実に素晴らしい。特に3曲目「To Enter the Realm of the Ravenlord」は男臭いギターメロとクリーンの掛け合いが余りにも濃厚、かつTAAKE辺りを思わせる土着哀愁メロが聴けるかなりの名曲。哀愁だけでなく、儚さも秘めたメロディが聴ける「Upon the Throne of North」、エピックな展開の「Nordic Dawn」、珍しく笛クサメロも登場する「Icewinds Unleashed」など、どの曲にも聴かせ所があって金太郎飴になってないのが良いですよね。「ヴァイキング流儀の叙情トレモロの横行するメロブラ」という縛りの中でしっかり曲を個性付け出来てるのは本当センス良いと思う。
作風は一言で言えば、CARPATHIAN FORESTやURGEHAL、ENTHRAL辺りのバンドの流れを汲む、オールドスクールな側面も強く感じさせる、いわゆる「True Norwegian Black Metal」そのものという感じの音で、主要メンバーが関わるNATTELECARRIERよりも更にストレートな音なんですが…特に物凄く特徴のある路線という訳ではないのに、これが物凄くかっこいいんですよね。個人的には「ストロングスタイル」という言葉を思い出しました。
この曲は個人的に最近(One Two Three辺り)のモーニング娘。のダンサブル路線に近い楽曲だと思うんですが、音も構成ももっと分かりやすく仕上げてきた感じですね。個人的にはこれくらい分かりやすい方が好み。キャッチーなコーラスと挑発的な合いの手の掛け合い、サビの抜けのいい高音など、シンガーのPileさんの魅力が詰まった楽曲。「True Diva」も買ってしまおうかなぁ…。 タイトルが「Darling」でなく「Daring」なのは、歌詞の内容と、「敢えて…する」「恐れずに…する」という意味の動詞「Dare」の現在分詞形を引っ掛けてるから?発音は思いっきり「Darling」ですけど。
最初ベストを借りて聴いた時は、ゆる~いコーラスパートや合いの手でちょっと引き気味になり、飛ばしてしまったんですけど…フルコーラス聴いたら超名曲でした。なんだろう、この緊張感のあるサビのメロディは…。ちょっとJanne Da Arcっぽい感じも。サビとのギャップの合わせ技で、気が付いたらコーラスパートのユルさも妙に癖になってました。ちなみに、後からソロVerも聴かせて貰ったんですが、サビで徳井さんがシリアスで張り気味の歌唱、Pileさんが巻き舌気味のコミカルで可愛らしい歌唱と、他の曲から受けるイメージと逆の歌い方をしてたのがかなり興味深かったです。
ギターのフレーズもブラックの寒々しさや叙情性よりは、カオティックで殺伐としたものを中心に弾いている感じで、それがスラッジ由来の灼け付くようなノイジーな音色とも相俟って、実体を持ったかのようなリアルなどす黒さを感じさせてくれますね。ヴォーカルはエフェクトが掛かってるせいでどうも狂性を殺いでしまっている感じなのが惜しいですが、「at the Mouth」での脳みそを弄くられているような喘ぎ絶叫を始め、パフォーマンス自体は殺気があって悪くないです。
ミディアム中心で、時折バタバタしたリズムを取り入れたドラムパートは「Hvis Lyset Tar Oss」期のBURZUMっぽいですし、ギターリフの金属質な音色は「Filosofem」アルバムのそれをもう少し聴きやすくしたような質感。ヴォーカルの真に迫った絶叫も、当時のCountの叫びに肉薄するような迫力があって、非常にかっこいい。
この曲、なんかラルクのTetsuya作曲のポップサイドの楽曲っぽい雰囲気があるんですよね…。特にLINKとかGOOD LUCK MY WAYとかの、2000年代半ば以降のシングル曲っぽい感じ。サビのピースフルな高揚感とかっこよさを両立させているメロディなんかもそうだし、爽やかなストリングスの使い方なんかもそれっぽい。当然、個人的にはツボを突かれました。カラオケで男性にキーをちょっと下げてhydeの物真似をしながら歌ってもらったら面白いかも(笑)。
音質はメジャーなバンドと比べると少し平べったい感じがしてしまい、キーがかなり壮大なフレーズを弾いていても、例えばANOREXIA NERVOSAやSCARS OF CHAOSのような「ド派手」な音像にはならない感じなんですが、逆に禍々しさや陰惨さの演出という意味ではこの音でこそ、という気もします。個人的に、ドラムの音の洪水にキーボードやトレモロリフが呑み込まれるミックスは苦手なので、これくらい湿った音の方が良く思えたり。
7曲目「Bombing Certain Land」のリフ使い等、パートによってはメロウさを押し出してくる部分もありますが、基本的には渋めのプリミティブだと思う。時折用いるオールドスクールな刻みや、高音絶叫ではなく、恫喝するようながなりを聴かせるヴォーカルもあって、殺伐とした感触もかなり強めの仕上がり。民族的というよりは、現代社会への反抗的なイメージの強い音ですね。
ノルウェー産らしい邪悪なだけではない、土着性を帯びたメロウさも感じられるトレモロを武器としつつ、所々にオールドスクールな熱気のあるパートを挟みドラマ性を演出する、いかにも「True Norwegian Black Metal」といった感じの作風で、TAAKEやGORGOROTH辺りを直接的に連想させるような音。モダン過ぎずRAW過ぎずな、湿り気を帯びたプロダクションも土着的なメロウさ、オールドスクールな熱気としっかり合っていて良い感じ。
あとこのバンド、かなり堂に入ったバンドサウンドを出しているので意外だったんですが、実は独りブラックらしいですね。レビューを書くに当たって調べていてちょっと驚きました。KEEP OF KALESSINやENSLAVEDのリリースで知られるIndie Recordingsが目を付けるだけの事はある良質な物件ですので、ストレートなノルウェー産ブラックが好きな方は是非。
以前購入した「La Morte Luna」が、フレーズが聞き取れないようなあまりにも酷い音質で、「確かにアングラでカルトな雰囲気はあるけど、私には無理かも…」とこのバンドを見限りかけてたんですが、とんでもない思い違いでした。VLAD TEPESって偉大なバンドだったんですね…これはマジで素晴らしい。 まずフレーズの反復を楽しむ事すら困難な「La Luna Morte」と比べると段違いに音質が良いです。確かに粗い音質ではあるんですが、DARKTHRONEの3部作やSATANIC WARMASTERの初期作などプリブラの代表的な作品が聴ければ全然行けるレベルで、フレーズや楽曲の展開がしっかり楽しめます。ディスコグラフィを見ると、こっちの方が古い音源なのに…。