また、疾走パートでも狂気や瞑想的な感触も感じさせる「Divine Light」「Hunted Prey」、サイケデリックなメロディと共に這いずり回りつつ、即興的なドラムが聴き手を威嚇する「Kiara」、どす黒さだけでなく、乾いたメロウさもある「On the World’s Grave」、耳に岩石を突っ込むかの如き害悪ノイズリフで責め苛む「Under the Slag Heap」など、アンビエント志向の強いブラックながら楽曲に幅を持たせているのもいいですね。ネガティビティ全開とは言え、意外にメロディにも意識が向いてる作りなのも好みです。
2012年発表の音源集。 89年発表のデモ「M.O.D.L.」、同年リリースの同タイトルのEP、92年発表のEP「Antichristian Front of Freedom」、同年発表のフル「Ficcion, Lujuria y Blasfemia」、94年発表のフル「F.A.L.」の計5タイトル収録のお得盤。
ちなみに南米産のバンドを多く扱う有名レーベル、Hammer of Damnationからの再発盤には、ボーナスでBathoryのカヴァーに加え、95年から2000年までの音源から6曲が収録されており、軽くベスト盤の様相を呈していてかなりお得。95年の音源は如何にもデモって感じですが、メロウさをRAWさが際立てる97年音源、サタニックなムードの色濃い2000年音源など本編とは違う味わいで良い感じ。ただ、Satanic Propagandaから出てるオリジナル盤は、DISSECTIONの超名曲「The Somberlain」のカヴァーが付くらしいので、そっちを探すのもありかも。
…まさか、カップリングでガチなメロスピ系アニソンが来るとは思いませんでした…。正直表題曲そっちのけでこの曲ばっかり聴いてしまってます(笑)。ツーバスにストリングスが乗るオケとか、ギターソロとかまるっきりメロスピで最初聴いたとき吹きましたもん(笑)。そして特筆すべきはサビメロの劇的さ。シンフォゴスではなく、あくまでメロスピアニソンなので「歌メロに限って言えば」ですが、まるでクサメロ全盛期(「ルナティック・ラブ」「エンジェルハイロウ」「Alice in the Necrosis」辺り)の六弦アリスのキラー曲を聴いてるようだわ…。六弦アリスと異なり、歌唱はアイドル系ユニゾンですが、それに抵抗が無いクサメラーなら必聴ですよ。
個人的にこのアルバム、イタリアのバンドの作品ながらどこかノルウェーの黎明期バンドのような雰囲気が漂っているように思うんですよね。例えば地下臭く陰湿ながらプリブラほどミニマルではない作風は、1stの頃のMAYHEMを思わせますし、「The Last Winter」は「Isa」期のENSLAVEDにも通じる、神秘性とダイナミズムを同時に感じさせる良曲だと思う。
WORSHIPやMOURNFUL CONGREGATION辺りの葬式ドゥームと比べるとテンポは大分速めで、メロディも鮮やかな事からその手のファンには徹底していないように聴こえるのかもしれませんが、個人的にはこれはこれで丁度良い按配だと思うんですよね。AHABやSWALLOWS THE SUN辺り行ける人は試してみてはどうでしょうか。お勧めです。
当然ながら過去に似た作品のないアルバムですが、強いて言うなら「Quick Fix for Melancholy EP」と世界観が似ているような気もします。こちらの方が作り込まれていて、陰影も濃い感じですが。既にGarm氏の感性の虜であるならばマストバイ、そうでなくてもアーティスティックな暗黒音楽が好きであれば大推薦。ただ、メタルやロックにしか興味がない人はスルーでもいいかも。
ジャケに貼付されたシールには、BEHEMOTHやDIMMU BORGIR、CRADLE OF FILTHなどの有名バンドが引き合いに出されてますが…確かに、これらメジャーバンドを比較対象にしてもおかしくないくらい、メジャー志向かつハイクオリティなサウンドですね。クリアかつ音圧の高い、重低音を効かせた畳み掛けはBEHEMOTHに、シンフォ要素を導入したスケールの大きい音作りはDIMMU BORGIRに、時折垣間見せるゴシック的な美意識の高さはCOFにそれぞれ通じるものがあり、これらバンドの良いとこ取りをした音楽性と言えるかも。
フランス産インダストリアル・ブラック。 フレンチブラック・エリート達によるプロジェクトで、ARKHON INFAUSTUS等の666 Torturer氏、MERRIMACK等のJudicael氏、ANTAEUS、SECRETS OF THE MOONのLSK氏らが在籍している事が判明しているらしいです(どのメンバーがこのプロジェクトでどのバンドネームを名乗っているか、何を担当しているか等は不明らしい)。
人脈的には、DROWNING THE LIGHTやAUSTERE、WOODS OF DESOLATIONなど鬱系寄りのバンドが多いようですが、ここで聴けるのは真性にして衒いのない、ごくオーソドックスなブラックメタル。部分的にミニマルで瞑想的な展開を取り入れつつも、基本的には黒いトレモロリフやブラストビート等、如何にもブラックらしい要素を絡めつつ、緩急付けて聴かせる、暗黒なドラマ性を感じさせる作風。
個人的には、実はストイックで地味なメロディよりも、こうした分かりやすく琴線に響くメロディの方が好みなんですよね。それを弾くギターの音色も、金属質なノイジーさを強調しながらも、耳に痛かったり変に人工的だったりという事のない、奥行きを感じさせるような歪みの掛かったもので、上手くメロディの物悲しさを強調しているように思います。例えば、NARGAROTHの「Geliebte des Regens」アルバムは、ミニマリズム・悲哀・ノイジーさの全てで振り切っていましたが、それらをもう少しマイルドに仕上げた感じ…というと近いかもしれません。
基本は悲壮な哀愁メロディのトレモロで攻めるパターン多めですが、「Conquering the Throne of God」を始め、所々でカビが生えそうな陰湿なメロディも見られ、そういったパートではMUTIILATIONに通じるような病的さも垣間見せてくれます。また、ヴォーカルはがなるだけでなく、時折ホイッスル音すら混じってるように聴こえる、箍の外れた高音絶叫を交えてくるタイプで、それがアングラな狂騒感に拍車を掛けているような感じがします。
ただ、唯一いまいちだと思ったのは、1曲目「Becoming a Shadow」の中盤~後半に掛けての展開があまりにもくどい事でしょうか。スラッジーなリフでミニマルに聴かせる事自体は良いとして、アルバム構成的に「引き」のパートが来て欲しくない部分でくるのが、ちょっと惜しい感じ。まあ、それ以外には全く文句は無いですけど。プリミティブブラックとして完成されている音だと思う。
情景的なブラックメタルが好きであれば、幅広くお勧め出来る作品だと思います。COLDWORLDやAURVANDIL、NEFARIOUS辺りのコールド系、DORNENREICHやHELRUNAR辺りのフォーク系、WOLVES IN THE THRONEROOM、SKAGOS、PANOPTICONなどのカスカディアン系など、どのタイプを好む方が聴いてもなにか感じるものがあるかと。