…例えばCRADLE OF FILTHなんかは、シンフォ要素が混じりやすいようにバンドサウンドの方も整えている感じなんですが、このバンドの作風はもっと繋げ方がダイレクトというか、無理やりというか…。美と醜の融合というよりは、基本的におぞましい醜の要素がベースで、そこに美が点在している感じでしょうか。このバランス感覚が結構面白いんですよね。音としてのクオリティも高いですし。
楽曲の作りはとても丁寧だし、間違いなくハイクオリティな作品ですが、暴虐さに飽かせて突っ走るタイプではないのに演奏時間が30分ちょっとと短いのが、少し惜しいところでしょうか。それを除けばかなり素晴らしい作品なので、KEEP OF KALESSINやEMPEROR辺りのクオリティの高いブラックが好きであればお勧め。
フランス産ブラック/スラッジ。 バンド名を直訳すれば「倒れた男を見よ」のような感じだと思いますが(フランス語分からないので多分)、由来はジャック・オーディアールの映画作品から。ちなみにこの映画(Regarde les Hommes Tomber)、日本では「天使が隣で眠る夜」とのタイトルで出てますね。
個人的には柔和系よりこういった音の方が、トレモロリフをよりくっきり聴こえさせるという点でも好ましく思えますね。デス声の芯の通った響き、メロウなギターソロを交える構成など、メタルとしての質もかなり高いだけに、こういうプロダクションが映えますね。個人的には、ミディアム中心でよりアトモスフェリックさを重視したDER WEG EINAR FREIHEITという印象も受けます。DER~は最新作をSeason of Mistからリリースするという出世振りでしたが、このバンドも何かきっかけがあればもっと知名度を上げられそう。
CRADLE OF FILTHを長年支え続けたギタリスト、Paul Allender氏の新バンドという事で話題も厚く、日本盤もリリースされている注目の一枚。私も購入しましたが、期待に違わぬクオリティの高さのある作品ですね。
作風は、クラシカルなメロディとメタリックなギターワークで攻める、シンフォニックなエクストリームメタルで、COFともそう遠くない路線ですね。COFの特に「Damnation and a Day」「Thornography」アルバムで聴けた音に近い、熱量の高い感じのギターワークがやはりかっこいい。デスやブラックよりも、正統派、メロデス、スラッシュ辺りの影響が強いのも当時のCOF的ですが、こちらでは更にその傾向は強くなっている印象。
買おうかどうか迷っていたんですが、試聴したところブラックメタルパートの余りのかっこよさに即購入決定でした。作風自体は相変わらずセオリー無視のアヴァンギャルド・ブラックですが、ストレートにブラックメタルしている部分は過去の名曲「Traces of Reality」を髣髴とさせる、即効性も非常に強いかっこよさがあると思います。
もうこれは、この音源に目を付け、再発してくれたSeason of Mistには惜しみなくGJを送りたいですね(笑)。ジャズやエレクトロニカ、アンビエントなどの要素を盛り込み、アヴァンギャルドな展開を見せるブラックメタルですが、洒落ていてメロウな雰囲気ばかりでなく、ブラックやゴシックを志向するバンドがこれら要素を取り入れたとき独特の、頽廃的・破滅的なムードが漂っているのが素晴らしいです。マイルドなクリーンヴォーカル、幽玄なキーボード等音色選びのセンスも抜群。
印象としては、「Memoirs」以降の、本格的にエレクトロニカ路線に移行していったTHE 3RD AND THE MORTALの世界観を、ブラックの様式で演っているような感じなんですよね。ほんとこの頽廃的で美しい世界観たまらないです。ただ、ジャズやエレクトロ要素の強い、比較的穏やかなパートに比べると、エクストリームメタルの攻撃性で攻めるようなパートに若干の物足りなさを覚えるのが、惜しいところでしょうか。個人的には攻撃的なパートにも他ジャンルの要素がバリバリ入っている方が好きなので。
販促コメントにはOPETHやPORCUPINE TREE、ULVERファンに推薦とありますが、それ以外にもTHE 3RD AND THE MORTALやIN VAINなど、頽廃的で美しい世界観を持っているバンドが好きな方にもお勧め。