MARDUK「Plague Angel」でのMortuusのパフォーマンスを思わせるような、ヴォーカルの鋭いがなり声(特に「Shining」での「Tearing the Tree of Life down!」の絶叫が一瞬寒気を覚えるほどかっこいい)もかなり良いですし、ブルータル系統が好きなら買ってまず損はないかと。マイナーですが、カルト志向に理解がないと楽しめないという訳ではなく、ごく入りやすい音出してると思います。
ヴォーカルの太っちょなルックスになんか愛らしさを覚えたりしてたんですが、音は愛らしさの欠片もない、殺伐極まりないファストブラックですね。荒涼感のある爆走にインパクトのある叙情メロを絡めて行く手法は、Legion在籍時のMARDUKにかなり近いスタイル。「Slay the Nazarene」を連呼する曲があったり、「Into the Fathomless Depths」というインストがあったり、スウェディッシュブラックへのリスペクトは並々ならぬものがありそう。
2011年発表の3rd。 EMPERORの「Ensorcelled by Khaos」のカヴァー入り。
前作を聴いた限り、このバンドがここまでEMPERORを意識した作風のアルバムを出すって何か意外な感じ。基本RAWで邪悪なブラックなんですが、まずドラムをそれ程前に出さず、ギターの歪みに音を覆わせ、そこから禍々しいトレモロが零れ落ちるようなプロダクションが「In the Nightside Eclipse」期のEMPERORを彷彿とさせますし、呪術的なミドルパートやスラッシーな疾走パートなんかは意識してないと言ったら白々しいほど似てる。ヴォーカルのロングトーンを多用した大絶叫もそっくり。
2011年発表の1st。 Attila Csihar (MAYHEM)、Nicholas McMaster (KRALLICE)、Travis Ryan (CATTLE DECAPITATION)がゲスト参加。…もうこれ年間ベストでいいかもしれない。
Steve Tuckerがヴォーカル、Blasphemerがギター、Flo Mounierがドラムというエクストリームメタル界の超重要人物が一同に会した…という触れ込みの、まさしく期待通りのテクニカルなデスメタル。Steveのズ太い咆哮に威圧されながらBlasphemerとFlo Mounierの達人同士の立ち合いを、特等席で見られる(聴ける)ような素晴らしい作品です。
ただ、音質が繊細さ重視なためか、少しダイナミズムに欠ける感じがあるのが残念ですね…BARREN EARTHやSWALLOW THE SUN辺りのメロデスの哀愁とドゥームの重厚さを兼ね備えたバンドが好きならばほぼ確実に気に入るであろう、深遠な世界観を描いてますが、出来れば音質もこれらのバンドと同じくらいメタリックで、ダイナミックだと、個人的には更に良かったんですが。
ブラックメタルの中でも、レアケースと言えるくらい刻みリフに特化したタイプのブラックですね。スラッシュの激しさやダークさを伸ばした結果、ブラック化したかのようなスタイルですが、オールドスクールな感触だけでなく、プロデューサーのAndy La Rocqueの手腕なのか、モダンかつブラックらしいダークさを失わない質感のある音に仕上がってるのが特徴。
ただ、キーボードやアルペジオ、ノーマルヴォイス(渋い美声!)を取り入れた4曲目など、壮大さやドラマ性を重視するあまり冗長になってる部分が少しだけあるのがネックかもしれません。まあ一部なのでそこまでマイナスではないですが。1曲目の45秒~辺りなどで散見される、スラッシュベースならではなフュリアスなリフとリズムの応酬、重々しさも軽快さも表現できる「刻みリフ」のポテンシャルを活かすような、Andy La Rocqueのプロダクションなどそれを帳消しにする美点も多いですしね。