ブラック特有の轟音ギターを用いて情景を描く作風はWOLVES IN THE THRONE ROOMやALCESTに通じますが、あちらのバンドのような清浄さ、美しさは薄く、もっと病的でドラッギーな印象で、その辺りブラック好きの感性に合うかもしれません。新世代のブラックが好きならば聴いておいて損はないと思います。
そしてそのメロディの良さを武器にした、楽曲の充実振りも素晴らしい。トライバルなパーカッションとエキゾチックなアコギも取り入れ、異国情緒を演出するオケに、Garm氏を思わせる深みのある低音ヴォーカルが響き、幽玄な世界観を演出する「The Old Walking Song」はこの名盤の中でも異色かつ出色の出来だと思う。他の曲もブラックメタル要素が哀愁メロディと見事に融和していて、音楽を聴いている事を忘れてしまうくらい、彼の作り出す世界観に没頭してしまいます。
ただ一つ解せないのが、DODKVLT特有の美しいメロディが華々しく炸裂し、ヴォーカルがリアルな感情を吐露する、14分を超える大作でアルバム中でもかなり作りこまれた楽曲である「Buried Beneath the Rust」が、何故かボーナス扱いなことですね。これ、彼のメロディセンスの高さを証明するような曲だと思うし、普通に本編扱いで良かった気が。
また、今作はアルバム前半にガールズロック的な清涼感、爽やかさの強い楽曲、後半に映像的な、サウンドスケープの美しい曲を中心に配置し、要所で「MY BOY」「Take It Easy!」などつんく氏のペンによる、アクの強い楽曲がアクセントを与える…と、通して聴くと流れが自然で、聴きやすい構成に仕上がっているように思います。
数多くの良質なブラックメタル音源を世に送り出し、ブラック好きからの注目も厚いWorld Terror Committeeですが、そんなアベレージの非常に高いレーベルからのリリースの中でも、最高クラスのアルバムなんじゃないかと思います。発売年度に聴けてたら、年間ベストアルバムの候補に間違いなく入れてたと思う。
ダーティで不道徳で、デスメタルにも通じるドロドロ感の強いウォーブラックである事自体は「Black Putrescence of Evil」の頃と変わっていませんが、 全てに於いてパワーアップしてますね。隣の部屋から聴こえてくるようだった音質は、今作では圧迫感も増し、地下臭さを感じさせるのに丁度良い篭もり度になっているし、SE的なパートを挟み、更に不敬さを演出する構成もチープとは言えない凝りよう。
PALE CHALICEはアメリカのブラックメタルバンドで、このEPが初の音源となるようですが…いきなりレベル高いですね、これ…。粗めのプロダクションや陰湿なトレモロ、陶酔感を感じる疾走など、プリブラとしての要件は備えつつ、この手の普通のバンドよりも一歩踏み込んだ作風を演っている感じ。DEATHSPELL OMEGAは「Si~」アルバムで暗黒美や宗教的な禍々しさに重きを置く作風になり、プリブラからは離れた感じですが、この作品はそうした禍々しさをある程度匂わせつつ、依然プリミティブな音を出している感じですね。
その二点で一時放置気味だったんですが、時間を置いて聴いてみるとそんなに悪くないんですよね。何気に曲はどれも良質で、さっき槍玉に上げた「Glory Days」も曲自体は素晴らしいし、「My Days for You」は彼女を良く知らなかった私に、その曲のシングルだけでなくアルバムまで買いに走らせたパワーがありますからね(笑)。真野さんの歌唱は、決して技巧的ではないものの、弾けてる曲でもどこか真摯さを感じるもので、個人的には凄く好感。というか純粋に彼女の声が好きっぽいです(笑)。「天気予報があたったら」の溌溂とした歌を聴いてると、こっちまで元気になれそうですもん。
…まあそれでも、☆3つはちょっと付けられないかな…というのが私の評価です。「My Days for You」のような、初見でもがっつり引き込まれる超名曲はあるけど、全体としてはまあまあといった感じ。しかし、帯のコピーが「二十歳最後の青春超大作」なのに、このジャケット衣装は…突っ込み待ちなんでしょうか(笑)。
個人的に神曲な「My Days for You」を差し置いてトリの曲ですが、アルバムの微妙な部分(コンセプト・アレンジ)を吹っ飛ばすくらいの名曲だと思う。TUBEの爽やか系シングル曲を思わせるような清涼感のある曲調と、真野さんの可憐さと溌溂さを兼ね備えた歌唱が見事に合致して、聴いてるだけで訳もなく良い事がありそうな気分になってきます。休日の早朝のジョギングとかの時に聴くと最高の気分(笑)。ただ、この曲が素晴らしいだけに、アルバムのエンディングは蛇足に思えてしまうんですが…ファンから見たらそうでもないんでしょうか。
THE ポッシボーの新譜に入ってそうな曲だと思いましたが、作詞/作曲/編曲を本上遼さんが手掛けてるんですね。…こういうアッパーな曲もこなせるあたり、1stの頃と比べると良い意味で図太さが出てきてるように思います。曲も単に盛り上がるだけでなく、鼓笛隊でアレンジしたら映えそうなインパクトの強いメロディもあって良いですね。それにしても歌詞に「!」使いすぎ(笑)。多分100個くらいある気がする(笑)