路線としては、初期JANNE DA ARCやラルク、MALICE MIZER等に通じる、キャッチーな歌モノをベースに、シンフォ・ゴシック的なキーボードとメタリックなリフ・リズムでアレンジした感じで、曲によってはエレクトロ・ゴス的なアプローチも。Being発、しかもエンターテイメント的なコンセプトを持ったプロジェクトという事で、色眼鏡で見てる人はまずこのリフの音色とフレーズがしっかりメタルしてることに驚くと思う。
Metal Archivesで調べたんですが、このバンドはメンバーがドイツのペイガン/メロディックブラックとしては割りと知名度の高い、HELRUNAR絡みなんですね。そのせいか、主にトレモロリフによって奏でられるメロディには、神秘性や叙情性が強く押し出されているという印象。これがノイジーなトレモロを伴う、寒々しい音像と合わさると更に神秘性を増すんですよね。
あからさまに「和」を意識したヴォーカルメロディといい、若さに任せてがむしゃら(それでいて完成度は激高)に自分の思うメタルのかっこよさを追求したような曲調といい、殆ど初期陰陽座のメロスピ曲まんまな作風の曲ですね。 …でも、何故このコンピに曲を提供しようと思ったのかが謎。目茶目茶浮いてます(笑)。他はなんか萌え系みたいな曲が多くて、正直かなりがっかり…ジャケの絵は綺麗でいい感じなのに。逆に言えば、メタラー視点では彼らの一人勝ち、なのかも。普通にサムライメタルとかRED HOT BURNING HELLとかに提供しても良かったのでは。
音圧と曲の持つ迫力で聴き手の眼球を圧迫し、「黒さ」を演出するような凄まじい作品。このバンドもTAAKEやCARPATHIAN FORESTと同様、「TRUE NORWEGIAN BLACK METAL」ロゴを掲げてますが、これらの有名ブラックと比較しても、全く見劣りのしない魅力のあるアルバムだと思います。
と言っても、この時点からかなり独特なサウンドを構成。 流れるように炸裂する流線型トレモロリフ疾走を聴かせつつ、ARCTURUSやBORKNAGARをヤケクソにしたような奇怪ながらキャッチーなコーラスパート、雨垂れを思わせるようなお洒落なピアノ、果てはCRADLE OF FILTHリスペクトっぽいゴシック系キーボードの導入などもあり、聴き手を欺くように展開するアヴァンギャルドな路線。
割と有名なレーベルから出てるのと、セールで安かったのもあって実態を良く知らないまま購入してしまいましたが、これがかなりの絶望音楽で個人的には当たり盤でした。タイプとしては、NORTTやXASTHURなど、葬式ドゥームに通じる破滅的な暗さを感じさせる、スローな鬱ブラックに、LURKER OF CHALICE辺りの腐食したアンビエント要素をプラスした感じでしょうか。
確かにノイズ系ブラックに全く耐性がないと辛い音ではあるんですが、この湿り気のある雰囲気の演出は確実に鬱ブラックやプリミティブブラックに通じるものがあると思う。調べてみるとUtarm氏はDRAGGED INTO SUNLIGHTやDODSENGELなどのブラックメタルバンドの作品にアートワークで参加した経験もあるらしく、感性的に共通するもののある作風もなんとなく納得。