91年発表の「My Angel」から2曲、94年発表の「Constellation」からの4曲に「The Deep Is The Skies」「Cosmojam」を足した、計8曲からなるCD。「Constellation」の内容は「Aspera…」収録曲の別バージョンですが、あのSamothが在籍していた時の音源なので資料的価値も高いかもしれません。また、Garmの声が若いです。デス声はまだ迫力不足かもしれませんが、普通声はちょっと素朴な感じがしてこっちはこっちで違った魅力があると思います。音質は「Aspera…」と比べると少し悪いですが、全く聞き苦しくはなくブラックの中ではかなり綺麗な方だと思います。
「Aspera...」はミディアムテンポ中心のアルバムですが、1曲目を飾るこの曲はかなり疾走しています。 この曲で最も印象的なのはGarmのヴォーカル。憎しみの塊を吐き出すかのように鋭いデスヴォイスを発揮してます。感極まっているのか、息の吸い込み方さえも凄い迫力… でも、歌詞が「Thy breeze maketh me shiver/Maimeth me with its frozen malice」と妙に被虐的な感じがするのがなんか気になります。
なんとあのMaster of disguiseがHIP-HOPに…!! ボードレールの詞にインスパイアされたと思しきこの詞がラップ調で歌われるのにまず違和感。途中挿入されるギターの早弾きにまた違和感。でもその違和感が上手く重なって、一つの世界を構築してしまってるのが凄いです。普段私は聴かないような音楽ですが、こういうのもたまには良いですね。
確かインタビューでは本人達もお気に入りで、ライブで演奏するたびに寒気が走るほど…と言及されていた曲だったと思います。正直アルバムの音質だと折角のツーバス連打の音が潰れていていまいちですが、確かにライブDVDではかなりかっこよかったです。「To our death will fall」の所のSimenのヴォーカルが色気ありすぎでヤバい(笑)
この曲のタイトルって、なんかRPGのラスボスが使ってくる技の名前みたいですよね(笑)前半の綺麗な歌い上げとラストのトリッキーなファルセットの対比はGarmの歌の上手さをまざまざと見せ付けてくれます。 ちょっとマニアックな意見かもしれませんが、「from oblivion by oblivion」のところのメロディ、そして発音のしかた(笑)に至るまで全てがツボです。よくこの部分は口ずさんでしまいます。
…驚いたのは、何と言っても楽曲が凄く良いんですよね。どの曲も歌メロが、アイドル系のポップスと比較しても何ら劣らないくらいにキャッチー。むしろそのキャッチネスが、メタル者特有の大仰な感性でブーストされている分、より魅力は高いかもしれません。初めてこのアルバムを聴いた時はまず歌メロの良さに目を瞠ったものです。「Rising!」「ExBrave」のキャッチネス、「scar」「君に恋した春桜」の叙情性、「I am You」の演奏との鬩ぎ合い…どれも魅力的なのは前提として、「キャラが立ってる」感じ。
個人的にこのアルバム、イタリアのバンドの作品ながらどこかノルウェーの黎明期バンドのような雰囲気が漂っているように思うんですよね。例えば地下臭く陰湿ながらプリブラほどミニマルではない作風は、1stの頃のMAYHEMを思わせますし、「The Last Winter」は「Isa」期のENSLAVEDにも通じる、神秘性とダイナミズムを同時に感じさせる良曲だと思う。
このバンド、出身国はドイツなんですが、楽曲が纏う空気は老舗の北欧ブラックっぽいんですよね…。例えば1曲目の1分くらいのパートを始め、アルバム内でも散見される土着的な叙情性と邪悪さをメロディを塗したスラッシーなパートは、TAAKEやCARPATHIAN FORESTなどのスラッシュを通過した「True Norwegian Black Metal」のバンドと通じるものがあるし、テンポを落としたメロウなパートの、邪悪な中に甘美さ・優美さがある雰囲気は近年のWATAINに通じるものがあると思う。