DISK UNIONにて掘り出し物として紹介されてて、興味を持って調べてみたら、サンフランシスコ出身のプログレデスメタルバンドで、WEAKLINGのメンバーが在籍し、更に所属レーベルがKRALLICEやCOBALTを輩出したProfound Loreという事が判明。そりゃ財布の紐も緩みますよね(笑)。
Metal Maniac誌のインタビューでClandestine Blazeとコラボレーションしたとあって気になってたんですが、こんな豪華なスプリットが出てたんですね…ただのスプリットではなく、なんとお互いの曲を2バンドのメンバーが共演し、演奏するという趣向まであって、いてもたってもいられず買ってしまいました(笑)。
感想は…SWの「CARELIAN SATANIST MADNESS」やCBの「DELIVERERS OF FAITH」はプリブラを聴いた事が無い人でも闇に引き込みかねないぐらい、そのジャンルとしての完成度が高いアルバムだと思ったんですが、それと比べると少しマニア向けな感じ。特に音質は4トラックレコーダーで録音されたと書いてある通りかなり悪く、ノイジーだったり癖が強かったりじゃなく純粋にしょぼい感じ(笑)。特にギターの音が篭もっていてベースの音より小さいかも…
良質なバンドの登場が相次ぐシンフォニック・ブラックメタル界に、ENSLAVEDやKEEP OF KALESSINを始め良質なブラック作品のリリースで知られる、Indie Recordingsより新たな刺客が現れましたね…。これがまた素晴らしい出来で、日々マンネリズムと格闘しながら、後進のバンドからは突き上げを食らうベテランバンドが正直ちょっと気の毒になってしまうほど(笑)。
しかし、このバンドはシンフォ要素の取り入れ方のセンスが素晴らしいんですよね…。よくCRADLE OF FILTHとも比較されている通り、メロディそれ自体にはゴシック的な美意識が感じられるんですが…そのメロディのぶち撒け方にゴシック的な隠微さは余り感じられず、むしろサウンドトラックの派手さやキャッチネスが強いような印象。可憐なソプラノの導入なども良いフックになっており、聴き手を一聴で虜にする力のある、非常に求心力の高い仕上がり。
ただ、音質が繊細さ重視なためか、少しダイナミズムに欠ける感じがあるのが残念ですね…BARREN EARTHやSWALLOW THE SUN辺りのメロデスの哀愁とドゥームの重厚さを兼ね備えたバンドが好きならばほぼ確実に気に入るであろう、深遠な世界観を描いてますが、出来れば音質もこれらのバンドと同じくらいメタリックで、ダイナミックだと、個人的には更に良かったんですが。
ちょっと前確かKerrang!にSatyrのお気に入りの曲リストが載ってましたが、 意外なことにDARKTHRONE等に混じってMASSIVE ATTACKがありました。 でもThe 3rd and the Mortalなんかもそっち系の方向に進んでるし、 北欧のエクストリーム系のミュージシャンがそういうのを愛好するのは珍しくないのかもしれませんね。 Satyrはサイドプロジェクトで打ち込み系で感覚に訴えてくる音楽とかやらないのかな。
しかし、1349やKEEP OF KALESSINなど、このバンドに関わったバンドが次々に名盤を放出しているので、肝心のSATYRICON自身はどういうアルバムで来るのかと思ったら…。このバンドにMAYHEMやEMPERORなど、パイオニアとして地位を築いたバンドほど、更に音楽性を発展・変化させていく傾向が強い気がします。
もしかしたら前述の1349やKOKなど良質なバンドが頑張っているからこそ、彼らはこういう挑戦的なものが作れるのかもしれませんね。ちなみにこのアルバム、DFの「Attera~」同様、買うなら絶対日本盤をお勧め。「STORM(OF THE DESTORYER)」は今のSATYRICONがストレートな曲をやったらどうなるかという感じで、ブラックメタラーなら一撃で悶絶するクラスのかっこよさです。 日本に生まれて良かったかも(笑)
前々作の「Now, Diabolical」以降、ブラックメタルの滲み出る邪悪さをロックのダイナミズムを通じて実体化させたようなブラックを演っている彼らですが、ロックのキャッチネスという点では「Now, Diabolical」で一度ピークを迎え、前作の「The Age of Nero」では鬱々とした雰囲気や冷徹な感触など、よりムードの濃さが強まった印象だったんですが、今作もその方向で進化している感じですね。
ブラックメタルの威風とネガティビティを感じさせつつも、分かりやすいメロディをフィーチャーしたリフに、ロック由来のダイナミックさ、力強さを感じさせるドラムが合わさると、まるでどす黒い空をバックに聳える万魔殿を目の前にしたような迫力。よくある箔を押したようなヘヴィさのオーバープロダクションではなく、楽器の音色をしっかり重視した音作りですが、「The Infinity of Time and Space」辺りの楽曲が持つ纏わり付くような…というか、有機的な暗黒性はこの音作りでこそ出しえるもの、という感じがします。
また、今回は自らの代表曲と言っても差し支えないくらいの自信作らしい「The Infinity of Time and Space」を始め、土着的なメロディを前面に出した「Natt」、彼等にしては渋いメロディ使いの「Our World, It Rumbles Tonight」などを始め、今までにも増して楽曲の個性が強い感じ。ただ、ゲストヴォーカルのクリーンを前面に出した「Phoenix」はちょっと…声質が合ってる分、WATAINの「They Rode on」やBEHEMOTHの「Inner Sanctum」よりは大分マシですけど…これだけは正直好みじゃないかも。
ただ、前作と比べると、キャッチーなコーラスパートを配した曲は多いものの、前作の1、2曲目ほどのキャッチーさを誇る曲はないかな、という印象。その代わり、先行シングルにもなった「My Skin Is Cold」の魔が外界に溢れ出してくるようなトレモロ、「Last Man Standing」の闇が忍び寄ってくるようなメロディなど、音から見える情景は更に濃くなっている感じ。SATYRICON史上最もダークなアルバムというのも強ち誇張ではないと思います。
唯一の不満はライナー以外なーんのうまみもない日本盤。 EP「My Skin Is Cold」丸ごとやリミックスを収録したコレクターズ・エディションを買えば良いんですけど、専門店じゃないと入荷しないと思うし、専門店でもいつ再入荷されるのか分からないしで待ちきれず日本盤買っちゃったんですが、ボーナストラック一曲も入ってないし…。せめて生ブラス入れた「Mother North」のライブバージョンくらい入れてくれてもなぁ…。
以前DIMMU BORGIRが初期のアルバムをメタリックな音で再録してましたが…私的にはSATYRICONにこのアルバムでそういう試みを演って欲しかったです。「Dominions of Satyricon」辺りは最近のライブでも演るみたいですが、せめてライブ盤を出して欲しいなぁ…シングルのカップリングじゃ物足りないです。
という訳で、OPETH辺りから入って、後期EMPEROR、Ihsahnソロ、PERSEFONE辺りのプログレメタル漁ってる人なら必聴。泣きのメロディも強いので、BARREN EARTHやBEFORE THE DAWN辺りの、ゴシック要素強めなドラマティックな音出してるバンドが好きな方もハマれると思います。
ANOREXIA NERVOSAの作品(特に2ndや3rd)がシンフォニック・ブラックの名盤として高い評価を受けているのって、単にオーケストレーションがド派出でメロがいいからだけでなく、ギターがオーケストラのサポートに堕することなくしっかりと主張している事、正統派等の聞きやすい方向におもねることなくブラックメタルとしてのブルータリティを貫いている事などから来る、シンフォブラックとしてのバランス感覚が優れている事が理由だと思うんですが、このSCARS OF CHAOSもそうした特質を備えた、優れたシンフォブラックを演ってますね。
二胡がまるでゲーム音楽の如きキャッチネスに満ちたメロディを振りまき、ギターソロも叙情的な「Ode to Expedition」の名曲振りを考えると、もっと二胡はメインでフィーチャーして欲しかったと思わなくもないですが…そういったあからさまにオリエンタルな要素を取り入れていないパートにおいても、どこか大陸的な大河に揺蕩うような優雅さがあるのが良いですね。「Sanguinary Salvation」のギターソロとピアノの絡みなんかはその好例でしょう。