Attila Csiharが参加していた事でも有名なバンドですが、音楽性はメタルとは少し距離を置いてる感じなんですね。打ち込みのリズムにシンセやサンプリング、Attilaのヴォーカルが乗り進行していくインダストリアルで、ギターこそ入っていないものの、アトモスフェリックなシンセが醸し出す近未来的だけど破滅的な雰囲気は、ABORYMなどのサイバー系ブラックに確実に通じるものがあると思う。厭人的、厭世的なムードが如何にもブラック人脈っぽい感じ。
ドイツ産のハイクオリティなアヴァンギャルド・ブラックという売り文句、同郷のSECRETS OF THE MOON辺りのバンドを思わせるお洒落なジャケットに惹かれ購入。レーベルも信頼と実績のDebemur Morti Productionsですし、これでハズレな訳はない…とは思っていましたが、これは想像以上に良いアルバムですよ。
トレモロリフで奏でられるメロディには、SECRETS OF THE MOONにも通じる、病的で邪悪な響きがあるのがまた素晴らしいんですよね。前衛的でありながら、変にスノッブな方向には行かず、しっかりブラックの暗黒さや妖しさを追及してくれている感じ。悲痛な感情を込めた絶叫も、声が太いためナヨナヨした感じになっておらず好印象。様々な要素を取り入れつつグダグダにならず、常に緊張感のある楽曲構成も見事で、1枚目にして総じてハイレベルな仕上がり。
公式にはメンバーについて言及されていないものの、実はALGHAZANTH、CIRCLE OF OUROBOROUS、HORNAなど、フィンランドでも著名なブラックメタルバンドのメンバーが参加しているバンドなのだとか。音の方も、その面子のハクに負けない、「プリミティブブラックとしての」クオリティの高さを持つ作品ですね。
ちなみにGarm氏が参加した「Limbo」ですが…これがダークウェーブ版HEAD CONTROL SYMSTEMといった感じで、彼のトリッキーでセクシーなヴォーカル炸裂しまくりで、彼の歌声が好きなら悶絶確定のキラーになってますので、ULVERファンで未聴の方がいましたら是非こちらも聴いておくようお勧めします。
しかも「Vision of the Arrow」では狂ったコンピューターが演算処理して更に狂っていくような音を出したり、「Mars' Avatar of June」ではパーカッシブなリズムにノイズや奇妙なメロディを乗せたり、曲によってはかなり独自な手法をも追求してたりします。正にめくるめくProscriptorの実験場という感じで、彼の音楽への造詣の深さをまざまざと見せ付けてくれますね。ただ、曲によって聴き手を没入させる手段がかなり異なるので、陶酔しきれないという向きはあるかもしれません。
HORDES OF THE LUNAR ECLIPSEやFOGのメンバーが関与するサタニック・ブラックと聴いて購入した一枚ですが…なんか想像してた路線と全然違いますね(笑)。オールドスクールで冒涜的なブラックのムードを、ドゥーム要素で更に強化したスラッシーでスラッジーなブラックメタル。熱量を持って引き摺るようなギターリフが、効果的に背徳感を煽るダーティな作風。何気にドラムの芯のある音が心地良く、それも宗教的恍惚を演出するのに一役買ってますね。