この間、某メタル系音楽雑誌にLost in Reverieのレビューが載っていましたが、随分点数が低かったです…(泣) しかもEMPERORのIhsahnを期待すると肩透かしを喰らうとか、眠くなるとか、難解すぎるとか…あのボードレールも謳った「肩にのしかかる時間の重み」を聴覚を通して具現化したような(←あくまで個人的な解釈ですが)「STILLNESS」なんて超名曲だし、これほどまで聴き手の想像力を刺激してくれる音楽ってなかなか出会えないと思うんだけどなぁ…こう言っては失礼かもしれないけれど、あのレビュアーさんは「EMPERORのIhsahnの作品」としてしかPECCATUMの音源を聴いてないんじゃないかな。ともかくあんなレビューじゃ全く購買意欲が湧きませんよ…もしも次にPECCATUMの作品をレビューするのなら「EMPERORのIhsahn」の過激さではなく、「PECCATUMのIhsahn」のクリエイティビティに惚れ込んだ人にレビューを担当してもらいたいものです。
具体的な音の方ですが、まずLord PZがSource of tideに専念するという理由で脱退したため、トリプルボーカルからツインボーカルへと変わっています(クレジットを見る限り、③と⑤には参加しているようですが…)。前作と比較しての印象ですが、「静」と「動」のコントラストがより明確になったような感じがします。
音的には「Lost in reverie」の幻想的・絵画的な音の響きをそのまま継承した感じですが、この作品はEPと言う事もあってか、アルバムよりも分かりやすいメロディが多いです。また、3曲ともにIhsahnが持ち前の絶叫を轟かせるパートがあるので、PECCATUMの作品に手を出そうか迷っているブラック好きの方はこの作品をまず案内役として聴いて、それからアルバムの深遠な世界観へと踏み出すのも良いんじゃないかと思います。 この作品は割と一曲一曲が短く、コンパクトな作りになってますし。
人脈的には、DROWNING THE LIGHTやAUSTERE、WOODS OF DESOLATIONなど鬱系寄りのバンドが多いようですが、ここで聴けるのは真性にして衒いのない、ごくオーソドックスなブラックメタル。部分的にミニマルで瞑想的な展開を取り入れつつも、基本的には黒いトレモロリフやブラストビート等、如何にもブラックらしい要素を絡めつつ、緩急付けて聴かせる、暗黒なドラマ性を感じさせる作風。
>ファッカーさん 手厳しい意見ですね(苦笑) メロディや唱法には好みがあるので、ファッカーさんにはあわなかったのでしょう。 でも私から言わせてもらえば、なによりも「詞」の面でDirがPierrotよりも優れているとは言い難いのですが…とりあえず、理由を以下に述べておきます。 キリトさんの詞で優れている点は、物事を多面的にとらえている点。 ID ATTACKとは離れた話で恐縮なのですが、メジャー進出直後の三枚のシングルである「ラストレター」「MAD SKY」「クリア・スカイ」を例にとって話を進めていきます。 この3曲は「戦争」について歌った楽曲です。 ここでポイントとなるのは、「ラストレター」が被害者側、「MAD SKY」が加害者側、「クリア・スカイ」がその戦争を俯瞰した視点で物語で進行していくところです。 試しに「MAD SKY」の詞を読んでみると、主人公となる独裁者の戦争を起こす理由は愛する人の為という事が分かりますよね。次に「ラストレター」を読んでみると、その戦争はある恋人達にとっては悲劇でしかなかった事が分かります。最後に「クリア・スカイ」を読むと、そのような戦争は愚かな行為の象徴として描かれていますね。 戦争について歌うとき、普通でしたら「戦争反対!」で終わりそうな所ですが、戦争を起こす側からの視点でも歌詞を描く事で、決して単純な善悪の二元論に終始せず、リスナーに思考させて自分なりの考えを弾き出すように仕向けている所が、キリトさんの凄い所であり魅力なのだと思います。 また、PIERROTの楽曲には「*自主規制」「Adolf」などの独裁者の心情を歌ったものが多いのも、独裁者のみを非人間として扱う事で人間が愚かな行為に走る可能性を否定することの危険性を考慮しての事なのでしょう。 対してDirの詞ですが、「理由」「ザクロ」の様にストーリー性のあるものは確かに素晴らしいですし、「FILTH」「ZOMBOID」のようなブラックジョークも面白いです。 …が、戦争について歌った「朔-saku-」「THE 3D EMPIRE」等が上記のPIERROTの楽曲のそれより深いとは、どうしても思えないんです。時折挿入される「FUCK OFF FUCK OFF AND WIPE」「SPARK AND SPARK」等という英詩は正直、幼稚としか思えないし、「自由と言う名の爆裂都市」「弾ける看守笑い叫ぶ」といった表現もどうも理解しかねるんですよ…Dirが戦争について歌ったものでは「蛍火」が傑作として挙げられますが、それにしたって「戦争の悲しみ」以上のものは表現できていないように思います。 以上の様に、「戦争」についてお互いが思考し、生み出した曲について見ていくと、やはり詞の面では(少なくとも戦争についての曲では)PIERROTの方に軍配が上がるように思えます。 でも、「朔-saku-」は好きな曲なので、さすがに詞を幼稚とか言うのは自分で言ってて凹みますね(苦笑)。Dirの詞を高く評価しているファッカーさんがこの曲の歌詞を深読みして、この曲に込められたメッセージが決して幼稚ではないことを証明して下さると嬉しいです。