2nd収録の名曲「Under the banners of horned knjaz」の主旋律と良く似たメロディの笛のフレーズから始まる曲。このフレーズとツーバスの絡みや中間の叙情的なキーボードなどが心に迫ってきます。 …ですが、曲中に挿入される「ヘイ、にゃんにゃんにゃん、ヘーイにゃんにゃん」のコーラスのインパクトが強すぎ(笑)
ただ、歌入りの曲は6曲で、しかもそのうち3曲が「The Taste Of Victory」と被るのがネックになっているかもしれません。それと、歌詞を読むと「ヴァルハラ」「ラグナロク」の概念が取り入れてあったり、リスナーへのメッセージ(?)のような所に「ヴァルハラで会おう」みたいな事が書いてありましたが、NSから北欧神話に傾倒したんでしょうか…?詳しい方解説をお願いします(笑)
しっかりとしたヘヴィさを醸し出す、引き摺るような音色のギターリフが音の壁を作り出しつつ、そこにキーボードやリードギター等が悲哀に満ちたメロディを丁寧に紡ぎ上げる作風で、どちらかというと純正のブラックよりはSWALLOW THE SUN辺りのデス要素強いゴシック・ドゥームに近い音でしょうか。そこにアトモスフェリック/シンフォニック/メロディックの各種ブラックメタルのテイストを加味したような感じですね。
そして楽曲そのものも実に素晴らしい。特に3曲目「To Enter the Realm of the Ravenlord」は男臭いギターメロとクリーンの掛け合いが余りにも濃厚、かつTAAKE辺りを思わせる土着哀愁メロが聴けるかなりの名曲。哀愁だけでなく、儚さも秘めたメロディが聴ける「Upon the Throne of North」、エピックな展開の「Nordic Dawn」、珍しく笛クサメロも登場する「Icewinds Unleashed」など、どの曲にも聴かせ所があって金太郎飴になってないのが良いですよね。「ヴァイキング流儀の叙情トレモロの横行するメロブラ」という縛りの中でしっかり曲を個性付け出来てるのは本当センス良いと思う。
…ただ、一つ文句を付けるとしたなら、ブックレットがギュウギュウに詰まっていて取り出しづらい事でしょうか…無理矢理出そうとしたらデジパック歪んだし…。デジタルメインのリリースっぽいから仕方ないんでしょうか。ともかく、DEATHSPELL OMEGAやVIRUS、後期ALTAR OF PLAGUES、脱プリブラ期のNACHTMYSTIUMなど、前衛性と暗黒な雰囲気を兼ね備えたブラックが好きであれば聴いて損はないと思います。素晴らしいです。
もうこれは、この音源に目を付け、再発してくれたSeason of Mistには惜しみなくGJを送りたいですね(笑)。ジャズやエレクトロニカ、アンビエントなどの要素を盛り込み、アヴァンギャルドな展開を見せるブラックメタルですが、洒落ていてメロウな雰囲気ばかりでなく、ブラックやゴシックを志向するバンドがこれら要素を取り入れたとき独特の、頽廃的・破滅的なムードが漂っているのが素晴らしいです。マイルドなクリーンヴォーカル、幽玄なキーボード等音色選びのセンスも抜群。
印象としては、「Memoirs」以降の、本格的にエレクトロニカ路線に移行していったTHE 3RD AND THE MORTALの世界観を、ブラックの様式で演っているような感じなんですよね。ほんとこの頽廃的で美しい世界観たまらないです。ただ、ジャズやエレクトロ要素の強い、比較的穏やかなパートに比べると、エクストリームメタルの攻撃性で攻めるようなパートに若干の物足りなさを覚えるのが、惜しいところでしょうか。個人的には攻撃的なパートにも他ジャンルの要素がバリバリ入っている方が好きなので。
販促コメントにはOPETHやPORCUPINE TREE、ULVERファンに推薦とありますが、それ以外にもTHE 3RD AND THE MORTALやIN VAINなど、頽廃的で美しい世界観を持っているバンドが好きな方にもお勧め。
この作品で初めて彼らのことを知りましたが…調べてみると何とメンバーがSECRTETS OF THE MOONとLUNAR AURORA絡み、しかも所属レーベルがOsmoseで、95年結成のベテランという事が判明。…ここまで聞くともう、実際にアルバムを買ってどういう音か確かめるよりなくなりますよね(笑)。何と言う私ホイホイな経歴なんだ(笑)。
SECRETS OF THE MOONはロックのふてぶてしいリズムとブラックの暴虐性を対比し、よりどす黒い禍々しさを演出することで、LUNAR AURORAはキーボードの音色に拘り、バンドサウンドの音響を操作することで、邪悪さを「魔性」とまで言えるレベルまで高めていましたが…このバンドは、ある程度オーソドックスなブラックの手法を取りながら、幽玄さと不気味さが同居するメロディやプログレッシブな展開で、同様の「魔性」を表現している感じですね。
「Ye Entrancemperium」や「I am the Black Wizards」辺りのEMPERORのクラシックな名曲に通じるものがある…ような気がしないでもない曲。でも個人的には、EMPEROR的な要素よりもプログレッシブで混沌としている部分の方が好きだったり。ほんと、奥深い邪悪さ・暗黒性を感じさせてくれるバンドですよね。
レーベルが変わり、ブックレットに赤フォント使ってたりといったアートワークの変化から、自分の望まない方向に音楽性を変えてたらどうしようかと思っていましたが、個人的には前作よりも好みですね。World Terror Committee辺りのレーベルがこのバンドの前作の路線に近い良質なバンドを多く輩出していますが、それらバンドと比べても一線を画する作風になったと思う。スウェーデンの真性ブラックの代表格のバンドに進化した、と言っても過言ではないかもしれません。
いくらブラック界の大御所が関わっていたって、EMPERORの「Wrath of the Tyrant」、LIMBONIC ARTの「1995-1996」のように、後に大成するバンドでも音質が純粋にショボい作品を出してたりするので、今作を購入するにあたっても身構えてしまったんですが…あれ?普通に聴けちゃうんですけど。むしろ、アングラなデスメタルでは全然良質な部類に入る音なのでは…。