MANESのメンバーによる新バンドの初のアルバムという事ですが、こう来たか…って感じですね…。後期のエレクトロニカの路線とは似ても似つかない、スローなテンポと不吉なメロディで聴き手の精神をじわじわと追い詰めるような、葬式ドゥームにもかなり近いタイプのディプレッシブ・ブラック。NORTTやLURKER OF CHALICE辺りと共通する、絶望的なムードを持った作風。初期の作風からシンフォ要素を無くし、絶望方向に純化した音、とも言えるのかも。
という訳で作風はエレクトロニカに接近した後期MANES作品とは全くかけ離れた音になりましたが、すぐそこまで破滅が迫っているような、それでいて自分ではどうにも出来ないような絶望感は「How the World Came to an End」アルバムと共通するものがあるのかも。ノルウェー産ブラック信奉者でなくとも、XASTHURの活動停止に涙を呑んだような絶望音楽ファンならばツボに嵌まる音でしょう。
ミディアム中心で、時折バタバタしたリズムを取り入れたドラムパートは「Hvis Lyset Tar Oss」期のBURZUMっぽいですし、ギターリフの金属質な音色は「Filosofem」アルバムのそれをもう少し聴きやすくしたような質感。ヴォーカルの真に迫った絶叫も、当時のCountの叫びに肉薄するような迫力があって、非常にかっこいい。
この曲は歌い方もメロディも、クサいだけじゃなく上品さや高貴さといったものが感じられる気がします。特に「♪I cry I try I fight to」部分の上品っぷりには聴くたびに悶えまくってます(笑)。リフの音は少し薄めですが、ゴリゴリの音にするよりこういう音色の方がフレーズのかっこよさが良く分かっていいですね。
アルバムのラストを飾る曲ですが、Leo Figaro、Cafe Au Lait両氏の才能のぶつかり合いという面ではこの曲が一番ではないでしょうか。ギターリフも文句の付けられないかっこよさだし、キーも歌も最高にクサいし素晴らしい! …ほんと、頭から尻尾までバンドの魅力がぎっしり詰まってるアルバムですよね。収録時間はミニアルバム並ですが、並みのアーティストのフルアルバムなんか比較にならない程充実した内容の作品だと思います。