作風は一言で言えば、CARPATHIAN FORESTやURGEHAL、ENTHRAL辺りのバンドの流れを汲む、オールドスクールな側面も強く感じさせる、いわゆる「True Norwegian Black Metal」そのものという感じの音で、主要メンバーが関わるNATTELECARRIERよりも更にストレートな音なんですが…特に物凄く特徴のある路線という訳ではないのに、これが物凄くかっこいいんですよね。個人的には「ストロングスタイル」という言葉を思い出しました。
ショップの紹介でも、デビューアルバムにして完成度の非常に高いアルバムをリリースしたシンフォニック・ブラックメタルバンドが現れたと話題になっていましたが、確かにこれはクオリティ高いですね。流石ENSLAVEDやKEEP OF KALESSINの作品のリリースでも知られる大手レーベル、Indie Recordingが目を付けるだけあって、プロダクションやメロディの良さ、楽曲構成力などメジャークラスと比肩しうる質の高さのある作品だと思います。
ヴォーカルは…これ最強でしょう(笑)。 こんなゴツいヴォーカル聴いた事ないです。 これ以上ないという位に野太い咆哮で、病んでるとか怖いとか思う以前にその迫力に驚いてしまう感じ。バーバリアンとかバーサーカーとかそういう雰囲気で、包丁渡したら今にも人どころかマンモスとかぶっ殺しそうな勢いです。TRIUMPHATORの「Wings of Antichrist」のラストにもイカツイ咆哮が入ってますが、イカツさではこっちのが上かも。 個人的にはMAYHEMの「Wolf's Lair Abyss」とFUNERAL MISTの「Salvation」がブラックのベストヴォーカルアルバムだったんですが、それらにも劣らないくらい気に入りました。 その2枚とこの作品でベスト3って感じです。
ただ、「The Black House」辺りを聴いている身としては、今までのImperialの活動や 今作のメンバー事情を考慮すると、余りにも順当な作品かな…と思わなくもないかも。 ヴォーカルのインパクトは凄まじいですが、「とんでもなく進化した!」とまでは行かない感じ。 と言っても、あまり変な(望まない)方向に変化されても困るし、「The Black House」が 気に入った方なら安心なクオリティですけどね。まあ買いでしょう。
基本的な路線としては、真性でどす黒いシリアスな雰囲気満点のブラックメタルで、レーベルで言うとAgoniaやWorld Terror Committee、Daemon Worship辺りが好みそうな感じ、関連バンドで言えばMGLAに近い音ではあるんですが…この作品はそれを踏まえつつ、ブラック特有の焼け付くようなリフをミッドテンポで聴かせることに特化し、より「どす黒い情景を描写する事」に重きを置いたような作風ですね。
一時的に活動停止状態にあったTSJUDERのメンバーにより結成されたという経歴、そして裏ジャケに燦然と輝く「True Norwegian Black Metal」のロゴ…この時点で、混じりっ気のないピュアなブラックメタルを演っているのは容易に予想が付きますね(笑)。TSJUDERと比較すると、こちらはブラストでの暴虐な爆走の頻度は抑え目な代わり、オールドスクールなミッドテンポやスラッシーな疾走をより多く取り入れている感じ。
DISK UNION1発のブラックメタルガイドにも載るなど、一定の評価を得ているアルバムで、ガイド本によると「ノイズやアンビエントを含有する実験的ブラックメタル」的な感じで紹介されてましたが…実際聴いてみると思った以上に人を選ぶアルバムですね、これ。作風的にブラックメタルがメインではなく、あくまでノイズ/アヴァンギャルドのアーティストがブラックの手法も表現の一部として取り入れた…くらいの比率。
この曲のタイトル、「Shut from the Sky(空から締め出されて)」という受動態ではなく、「Shutting from the Sky(空から締め出して)」という能動態になってるんですよね。この事からして、歌詞の主人公は分裂状態にあるのかもしれませんね。「閉所恐怖症」という単語が使われているのに開放感がある曲調の時点でどこか分裂的ですし。