ジャケットの雰囲気からは全くそんな素振りは見せていませんが、意外なことにサイバー/インダストリアルなブラックメタルを演ってますね。CD再生してピコピコ音が流れたときはジャケとのギャップに結構驚きました。無機質ながら暴虐なマシンブラストに、ブラックメタル流儀の不穏なトレモロを乗せ展開していく作風で、「With no Human Intervention」期のABORYMに近い音でしょうか。
ただし、ブラックの要素が強めで、それなりに激しいのでSOUND HORIZONが行ける方でもCRADLE OF FILTHやDir en greyが激しすぎて駄目な方には向かないと思う。また、語りや灰汁の強いV系歌唱も昔気質なメタラーには向かないかも。そう考えると、意外にもニッチな音楽性なのかも…でもそのニッチな音楽性に、ここまで情熱を注ぎ込んで作りこむアーティストがいるというのは嬉しいですよね。
同じブラック/スラッシュでも、北欧のAURA NOIRやAUDIOPAIN辺りとは全くベクトルの異なる音。ダーティさを志向する向こうに対し、こっちはよりブルータルさを追求した作風ですね。エクストリームメタル好きならこの暴虐性は是非体験して欲しいところ。特にBEHEMOTHやAXIS OF ADVANCEなどが好きな方にお勧め。
大半の曲のVoをSHININGのKvarforthが担当してます。 前作の「メロトロンを使用したシンフォニック・ブラック」というスタイルからして、プログレ的な要素が強い作風だったんですが、まさかここまで大胆に舵を切ってくるとは…この作風なら、EURO ROCK PRESS辺りが大喜びでレビュー書きそうです(笑)。
一体何なんだ、この惜しいアルバムは… ペイガン要素も感じる叙情的なメロディを、トレモロリフに練りこんで疾走するメロディックなブラックメタルですが…ちょっと音質が酷いと思う。単に粗いならまだしも、微妙に(=ノイズ系・RAW系として楽しむには半端に)ノイジーな中で、トレモロが微かに聞こえるような、妙に煮え切らない音作り。ドラムはドラムでまるで「鬼女」期のCRADLE OF FILTHのような軽さ。
暴虐性もそこそこある、シンフォニック・ブラックがベースながら、男女ノーマルヴォイスによるヴァイキング的な朗唱、イタリアン・マフィアのボスがワイン片手に夜景を楽しんでいるような、アダルトなサックスやピアノなどを取り入れた、プログレッシブな作風で、「Red for Fire/Black for Death」期のSOLEFALDにかなり近い路線。実質的なラスト曲の14曲目の冒頭なんて、悟りを開いたかのようにプログレ化してます(笑)。
ただ、曲間に「モノローグ」としてインストをバックに語りが入るんですが、これが微妙…いや、語るだけならまだしも、半泣きで訴えたりするのは生理的にきつい(苦笑)。SOLEFALDも「Red for Fire」で泣き歌いはやってましたが、そこまで真似しなくていいです(笑)。9曲目とか、何気にインスト部分に雰囲気があるし、シームレスに繋がるものが多いので飛ばしにくいんですよね。
これは鬱ブラックの中でも、割と上級者向けなんじゃないかと思います。よく比較対象としてBURZUMの3rdや7thが挙げられますが、BURZUMと比較しても静的で、風景画めいた作風だと思う。 「burned」のリフ/リズムや「what once shined」の後半の疾走、一部で聴ける叙情的なリードギターなど、動的なパートもあれど、基本的にはスローテンポのリズムにアルペジオや平坦なブラックリフが描く海のような情景に、漣のようにトレモロリフが被さる、動きの少ない作品。
「チェコのINFERNOが素晴らしい」とは聴いてましたが、確かにこれはかなり良いですね。ブラックメタルとしての衝動性や宗教的な甘美さと、メタルとしてのクオリティを両立させた、どす黒く堂々とした音は「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」期のWATAINを思わせますが…こちらの方が甘美な邪悪さにおいて若干譲る代わり、よりオールドスクールで辛口に仕上がっている印象。直接衝動を叩き込んでくるような攻撃性の高さ。
こういうどす黒く真性な雰囲気を出すバンドは最近少なくないですけど、この作品はその中でも「楽曲の良さ」がかなり際立っているように思います。特にギターがメロウなメロディを奏でるインストの「Loyalty of Honor」から、EMPERORの「Ensorcelled by Khaos」へのリスペクトとも取れる、ブラックメタルの宗教的神秘性を流出させるようなリフを伴いつつのリフで幕を開け、ドラマティックに展開していく「Altar of Perversity」への流れは、この手のバンドはかなり聴いてるはずなのに、思わず深く感銘を受けてしまったほどかっこいい。
一般的なエクストリームメタルファンよりも、トリップメタルが好きで、かつそのトリップ性をプリミティブ・ブラックに見出している人ならかなり気に入るのではないでしょうか。メロディこそ薄いものの、「Drawing down the Moon」期のBEHERITに、クスリの幻覚の中で神や魔と対峙するようなヤバさを覚える方にお勧めです。