また、ごく一部ではゴシック的な女性ヴォーカル(ソプラノ・クワイア)を取り入れ、楽曲に変化を付けているのもいいですね。特に1曲目、天使メタトロンの台詞を美麗なソプラノが歌い上げた後、ヴォーカルが「おおメタトロンよ、俺を退屈させるな(Oh Metatron don’t bore me to death)」と続けるパートはケレン味たっぷりで実に燃えます(笑)。ただし質は高いものの、1349のような大きな話題を攫うバンドと比べるとインパクトの面では劣るのも否めないかも。個人的には音作りもリフ捌きも心地良くて、聴きやすくて好きですけど。
音的には、粗いリフのディストーションが抽象的な雰囲気を演出する音像の中、ブラックらしいトレモロを中心としたメロウなメロディを響かせつつ疾走するスタイルで、WOLVES IN THE THRONEROOMやASH BORERなどのカスカディアン勢を思わせるようなブラックメタル。情景描写に特化する余り変に気取った音にならず、ブラックらしいサベージな暴虐性もあってバランスのいい仕上がりだと思う。意外にオールドスクールな展開を垣間見せるパートも。
アルバムのラストを飾る曲ですが、悲しいけど最後に希望が見えました的なありがちな終わり方ではなく、やはり沈痛な空気感の中幕を閉じます。息を呑むような美しさのピアノも、ただただ悲しい…。最後に「The game is...over...?」と「?」が付いてるのが救いかもしれませんが、そもそも救いといえるのかどうか…。
後半の、悲しみが胸の中で押さえきれなくなって圧倒されてしまうような悲痛な盛り上がりは、個人的にはこのアルバムのクライマックスと言っても良さそう。ヴォーカルも感極まっていつ泣いてもおかしくないほどエモーショナル。 ちなみに、作詞、作曲ともにヴォーカルが担当してますが、歌詞的には「Child's Play」とは関係無いのかな?「Child's Play」で「Torn between you and me」という詞を「Torn between me and me」と発音してた事を考えると、このタイトルはどうも無関係ではなさそうな印象を受けるのですが…。
WOODS OF DESOLATION、AUSTERE、GERMなど、鬱ブラック好きには知名度の高いバンドの関連メンバーによるプロジェクトですが、こちらはブラックメタル的な要素は殆どなく、メランコリックなメロディを大フィーチャーした鬱っ気のあるロックで、ヴォーカルもマイルドなクリーン。一般的なロックよりやや強めな歪みのギターと、そこに込められた哀愁深いメロディが鬱ブラックの出自を感じさせます。
ただ、確かに素晴らしいアルバムなんですが、ブラックメタルパートが本当に良いだけに、SE的なパートがちょっと長過ぎる気はするんですよね…イントロは音飛びっぽいノイズまで入ってるし。正直ちょっと勿体付け過ぎな構成という気も。とは言っても、余裕で★3つ付けますけど。宗教じみたカルト性をブラックに求めている方なら聴いておいて損はないバンドかと。ちなみに発売元はABSOLUTE OF MALIGNTYやARKHA SVAのリリースで知られるSatanic Propagandaで、その繋がりで知った方にもお勧め。
この曲調だと、最初のSEは老人が異常をきたして幼児退行を起こしたように思えてしまいます(笑)。ヴォーカルも老人が無理矢理搾り出しているかのような痛々しさがあって素晴らしい。天国に召される最後の時まで、恨み言と助けを求める声の入り混じった意味不明の言葉を吐き出しながらもがいてる感じ。…といっても、この曲のタイトルは日本語に訳すと「踊りませんか?(Do you want to dance?)」なので、そのイメージは私の勝手な妄想ですが(笑)
この作品、トレモロリフを多用しているだけあって、よく聴くとメロディアスな側面もあったりするんですが、パッと聴いての印象が全然メロウじゃないのが面白いですよね。それくらいメロディが陰湿。厳かに呪いの言葉を吐き続けるように呻くヴォーカル、地下臭く湿ったプロダクションもあり、その陰湿さは更に強調されてます。中盤にBEHERITの「The Gate of Nanna」のカヴァーを挿入してますが、原曲からして密教的なムードの強い楽曲だっただけに、全く違和感なくハマッていますね。