これも「Diabolis~」同様、KENOSE路線のオムニバス提供の大作(約20分)。 途中でヴォーカルが喚き気味な部分がありますが、Mikko Aのスタイル的にこういう喚きは結構貴重かも。それにしても、やっぱりこのバンドのリフ捌きはブラックの中でも頭一つ抜けてる邪悪さですね。たまらないものがあります。特に一度目のSEを挟み込むように挿入される、カオティックなリフはやばすぎ…っていうかこんな黒いリフで20分も押す曲なかなかないでしょう…ある意味最高に極悪(笑) 歌詞中のラテン語「Si non credideritis~」はイザヤ書の言葉で、確か「もし信じないのなら理解した事にはならない」という意味だったはず。「The howling of wolves~」はブレイクをモチーフにしてる…というかほぼ引用ですね。後半の宗教の比喩といい、このバンドの歌詞って何だか知的。
そして、この作品を超がつく程の名盤たらしめていると思うのが名曲⑪の存在。もしかしたら、ブラック黎明期の名作とされるMAYHEMの「Freezing Moon」やEMPERORの「I Am The Black Wizards」にすらも匹敵するくらいの名曲かもしれません。全体的にクオリティが高いアルバムですが、この曲によって作品が更なる高みへと引き上げられているように感じました。ただ、SE的な曲はもう少し短くして欲しかったかもしれません。雰囲気は凄く出ているんですけど、多いし5分もいらない気がします。
リフの美しさが群を抜いて秀でていると思う曲。 やっぱりこのバンドはブラック好きのツボを完璧に押える術を知っているのではないかと思います。ラテン語詞の「Inter spem et metum」は「希望と絶望の間に」という意味だそうです。その部分なんて、本当に神秘的なメロディ…。個人的には、ブラックなのにこの曲のメロディからは讃美歌を連想しました。
「SOLA FIDE Ⅰ」よりも更に長く、よりドラマティック。 1分30秒くらいの所など、度々登場するタームの長めなメロディの荘厳リフが素晴らしく良いです。ラスト近くの「SOLA FIDE...」からの呪殺声がかなり怖い。ちなみに、「Sola Fide Sola Deo Infernani Gloria」は、「信仰のみに、地獄の神のみに栄光あれ」という意味みたいです。
MARDUKのLegion、Emil在籍との事ですが、ネームバリューに恥じない質の高さですね。MARDUKと比較すると、刻みリフがより多く、スラッシュビートも多めでデスラッシュ寄りのブラックと言えそうな音楽性。GOD DETHRONEDをもっと暗黒寄りにした感じというと近いと思います。メロはメロデス的なかっこいいものもありますが、基本MARDUKの「La Grande Danse Macabre」辺りに近い頽廃性の篭もったものが多く、MARDUKを愛聴して来た人にも受け入れやすそう。
音的には、「Puritanical~」期のDIMMU BORGIRを思わせる、ヘヴィネスも備えたモダンな質感のあるシンフォブラックという感じですが、高音Vintersorg似、中音域はIhsahn似のクリーンを大胆に取り入れた、後期EMPERORの「Elegy of Icarus」「The Eruption」辺りのエピックな曲から直接の影響を得たであろう展開の楽曲があったり、キーボードの高貴な邪悪さがやはり中期以降のEMPERORを思わせる部分があったり、聴いていてどこかEMPERORの影もちらつくサウンド。
こういう作風だと、Dani Filthの言語感覚の良さが凄く映えるんですよね。例えば一曲目後半「Burning in those angel eyes」からの一節は超邪悪なナーサリーライムみたいで、軽く口ずさむだけで何か洗脳されそうな気持ちよさがある(笑)。いつもの本家よりも歌詞のタッチは猥雑というかラフで、こういった言葉の響きの良さを凄く楽しみながら歌詞を書いてるんだろうな…という感じ。
今作は例えばインダストリアルな雰囲気の強い「Summer Arteries」や、エスニックで儀式的なムードを漂わせつつキャッチーな「Mother Kali」など、本家の作風と掛け離れているものほど魅力的に仕上がっているように思います。逆に「Living with the Fungus」など本家で演ってもおかしくない楽曲に関しては、正直本家の方がいいかな…とも思ったり。ともあれ今まで以上にDani様のヴォーカルの魅力が色濃く出た作品ですので、彼のファンならば必携のアルバムでしょう。
LIMBONIC ARTの初期作(1st、2nd、デモ再録)って、バンドサウンドよりもキーボードを中心に据えたサウンドが、神秘性や禍々しさなどのブラックメタル独特の価値観を一般的なメタルの価値観の外側に成立させた事で画期的だったと思うんですよ。そのサウンドを作った立役者であるMorfeusがこういうメタリックな音のバンドを演るなんてかなり意外…。尤も、LIMBONIC ARTの復活作(Legacy of Evil)もリフのメロディの強い、メロブラに近いサウンドだったので、最近のMorfeusはメタルモードにあるのかもしれませんね。