個人的には、実はストイックで地味なメロディよりも、こうした分かりやすく琴線に響くメロディの方が好みなんですよね。それを弾くギターの音色も、金属質なノイジーさを強調しながらも、耳に痛かったり変に人工的だったりという事のない、奥行きを感じさせるような歪みの掛かったもので、上手くメロディの物悲しさを強調しているように思います。例えば、NARGAROTHの「Geliebte des Regens」アルバムは、ミニマリズム・悲哀・ノイジーさの全てで振り切っていましたが、それらをもう少しマイルドに仕上げた感じ…というと近いかもしれません。
ちなみに、CDトレイの下には「True Norwegian Black Metal」ロゴのパロディと思しき「True German Black Metal」ロゴが書かれてますが…TNBMロゴを使ってる代表的なバンドとしてTAAKEがいますが、メロディのセンスに秀でながらブチ切れた部分もあるスタイルは、確かにTAAKEと共通するポイントかもしれません。正直このヴォーカルに55分付き合うのは疲れますが(笑)、荒々しさとドラマティックさを併せ持つ良い作品ですので是非。
これ、相当クオリティ高くないですか…? タイプとしては刻みリフとトレモロリフを巧みに織り交ぜ、疾走パートに重きを置きつつドラマティックに、時にテクニカルに聴かせるスタイルで、疾走パート重視だった頃のDISSECTIONや再結成後のKEEP OF KALESSINに通じる音。勇壮なブラス系、幽玄で雄々しいクワイア系のキーボードの導入など、ペイガン的な味付けもあり。
ディスク2は、99年のデモ「Pain」と02年のデモ「Scattenlicht Des Mondes」に、未発表音源である「Die Leere」を加えた内容。「Die Leere」も1stと同路線の鬱ブラックで良い曲なんですが、それ以上に驚いたのはデモ音源。キーボードや効果音が、時折バンドサウンドを飲み込んでしまう音像で、1stの曲以上に魔的・神秘的な印象があります。
…「Mondinsternis」が元々はデモ3つを集めたアルバム、という性格の作品のため、これ一枚で05年までの彼らの音源をコンプ出来るかな…とも思ってたんですが「Vollmond」デモにはMAYHEMの「De Mysteriis Dom Sathanas」のカヴァーも入ってたんですね…めっちゃ聴きたいんですけど、25枚リリースとか聴かせてくれる気は全く無さそうです(笑)。
しかも曲のバラエティに富んでいるだけでなく、例えば「Early Bird」ならモータウン風、「消失点」ならバラード、「co・no・mi・chi」なら歌謡ロック、「I NEED YOU」ならパンクなど、どの曲もガールズポップの中のその路線で言えば最高クラスの仕上がりなんですよね。加えてクラシックなロックのエッセンスを演奏の随所に感じさせながらも、打ち込みを上手く使ったポップさの演出や、少女マンガ的な世界観の、キラキラした可愛らしさ等も両立させているのがホント素晴らしい。
…これは、ぶっちゃけB’zですよね(笑) 歌の入りの直前のギターメロとか、A~BメロまではB’zのパロディっぽいアレンジになってる気がする。「ELEVEN」アルバムや「GREEN」アルバムに入ってそう。サビの穏やかながら饒舌なメロディはJanne Da Arcのバラードに通じるものがあるかも。メジャー系Jロック聴く人は結構気に入るんじゃないでしょうか。
また、今作はアルバム前半にガールズロック的な清涼感、爽やかさの強い楽曲、後半に映像的な、サウンドスケープの美しい曲を中心に配置し、要所で「MY BOY」「Take It Easy!」などつんく氏のペンによる、アクの強い楽曲がアクセントを与える…と、通して聴くと流れが自然で、聴きやすい構成に仕上がっているように思います。