最後に、やっぱり気になる「Sailing Ships」。 長い長いインターバルを経て、ようやく作曲者の意図通りの形で録音されたこの曲、 僕らが待ちわびた「正しい姿」であるはずで、確かに文句のつけようのない佳曲ではある。あるのだが、正直、こうやって聴いてみると、いや、ヴァイのアレンジも捨てがたいじゃないか、と思えてしまった。 こうなると、Slip Of The Tongueの他の曲も俄然興味がわいてきた。 あのアルバムはエイドリアンにとって、心残りな記憶なのだと思うので、ここはもういっちょ、Wings Of The Stormもお願いしたいところである。
しかし、そうは言っても、War To End All Warsぐらいからこっちの彼の作風は、流石にそろそろ御腹いっぱいと言わざるを得ない。 特に今回はインストが多いということだが、そうなると特に、初期三部作で見られる、絶妙に練られたコード進行と一音の重みを感じさせるメロディの作品に比べて、 伴奏付きのリズムマシンをバックに、思いつくまま適当に弾きまくっただけのようなここ数作の悪い印象が、余計付きまとう結果になる。